底辺ロー卒生のブログ(答案の墓場)

H30から司法試験を受けている底辺ロー卒生が書いた答案UPしたりして、閲覧している皆様にご批評して頂くためのブログ

H30司法試験商法再現答案

※よくわかんないです

 

第1 設問1

1 Dは、会社法(以下法名省略)433条1項1号)に基づき、総株主の議決権の100分の3以上の株式を有する株主として、帳簿閲覧請求を行っている。甲社は、同条2項各号の事由に該当しない限り、かかる請求を拒むことはできない。

 (1) そこで、甲社としては、Dが「実質的に競争関係にある事業を営む」者(同項3号)であるとして、請求を拒むことが考えられる。

   Dは、乙社の全株式を有する者であるところ、乙社は近畿地方のQ県でハンバーガー店を営んでおり、甲社と同じ業種を営んでいる。また、甲社と乙社は出店地域すら異なるものの、市場において競合しており、実質的に競争関係にあるといえる。

   確かに、Dは乙社の経営に関与していなかったものの、Dは乙社株式を全株保有する者であり、将来において関与する可能性までは否定しきれないから、「実質的に競争関係にある事業を営む」者に含まれると見てよい。

 (2) これに対して、Dは、Aがリベートを受け取っている疑いの調査のために請求を行っているのであって、会計帳簿を乙社のために利用しようという意図はないため、請求は認められるべきであると反論することが考えられる。しかし、433条2項3号は主観的意図を問題としていない以上、客観的に「実質的に競争関係にある事業を営」んでいることをもって、甲社は請求を拒否できるというべきである。

   したがって、Dの反論は認められない。

2 よって、甲社は請求を拒むことができる。なお、DはAにD保有甲社株式の買取りを打診し、Aがこれを断ったことをもって本件請求を持ち出し、Aが請求の撤回を求めると改めて買取りを打診していることから、Aのリベート疑惑調査のためというよりも株式買取交渉の材料として請求を行ったと評価できるため、「調査以外の目的で請求を行ったとき」(433条2項1号)による拒否事由にも該当し得る。

第2 設問2 小問(1)

1 決議1について

(1) 本件において、決議1は、Cの解任を目的とするところ、A、B、Aに議決権行使を委任したDの賛成により、出席株主の議決権の3分の2以上をもって可決されている。そのため、一見すると、決議1に瑕疵は無いようにも思える。

(2) しかし、本件では、DのAへの議決権委任に際し、本件契約が結ばれている。その内容は、①Dが平成27年4月1日に、代金2400万円と引換えにD保有株式全てをGに引き渡すこと、②甲社がGの丙銀行に対する800万円の借入金債務を連帯保証する、③DはAに、平成27年3月25日に開催される定時株主総会におけるDの全議決権を委任することである。形式的に見ると、①~③は独立した条項とも思えるが、1つの契約内で行われていることからして、GのDに対する2400万円の支払債務について、その弁済のためにGが丙銀行から800万円を借り入れることの連帯保証人に甲社がなることの対価として、DがAに全議決権を委任したと見るべきである。

そうすると、甲社がGの丙銀行に対する借入金債務を連帯保証したことは、「株主の権利」たるDの議決権行使に関し、連帯保証という債務負担による「財産上の利益の供与」を行ったとして、利益供与(120条1項)に当たるというべきである。

なお、甲社が直接に利益を供与しているのはGであるが、Gの丙銀行に対する債務を連帯保証することにより、Dも確実に株式売却代金を受けることが可能となっているのであるから、実質的にDに対しても行われたものと評価してよい。

 (3) 本件契約は利益供与により全体が無効となるから、DのAに対する議決権委任も無効である。そうすると、本件でC解任の可決票数はA,B合わせた550票ということになり、甲社定款所定の取締役解任に必要とされる3分の2の議決権数に届かない。それにもかかわらず、Cの解任は可決されているから、決議1には「決議の内容が定款に違反するとき」(831条1項2号)として、取消事由が認められる。

2 決議2について

 (1) Aは、株主総会議長として、株主総会秩序維持のための議長権限を有する。もっとも、かかる権限も無制約なものではなく、株主の権利行使について一定の配慮することが求められる。

   本件では、Cが株主提案であるAの解任について、その理由を説明しようとしたところ、これを遮って強行採決を行っている。株主提案権(303条1項)は株主の重要な権利の一つであるところ、かかる権利行使に基づく説明については、正当な理由がない限り、これを妨げることは許すべきではない。そして、本件でこれを許す正当な理由はない。

   したがって、Aの議長権行使は議長権の濫用として違法である。

 (2) もっとも、決議2は否決決議であるところ、否決決議は何等の法律関係も形成しないことから、形成の訴えの利益が認められないため、取消訴訟自体が認められず、上記違法を主張することはできない。

第3 設問2 小問(2)

1 Aの責任

 (1) 甲社がGの丙銀行に対する借入金債務を連帯保証したことについて、間接取引(356条1項3号、365条)に当たらないから、間接取引規制に係るAの責任は存しない。

   確かに、甲社は連帯保証に際してGから保証料を求めておらず、一方的にGの債務を負担するだけの契約となっているものの、本件連帯保証により取締役Aが受ける利益は、Gが確実にDに株式売却代金を支払うことで、A側の株主が増えるという支配権維持に係る利益であり、経済的利益は甲社とAの間で相反していないためである。

 (2) もっとも、前述のように本件連帯保証は利益供与(120条1項)に当たるため、Aは800万円の返還責任を負う(同条4項本文)。なお、Aは自ら主導して本件連帯保証を行っているため、同条但書の適用はない。

2 Gの責任

Gもまた、利益供与による800万円の返還責任を負う(120条3項)。本件連帯保証時、Gは株主ではなかったものの、120条1項は「何人」に対しても利益供与を禁じており、また、Gは確実に丙銀行から800万円を借り入れるという利益を得ているから、問題はない。

第4 設問3

1 Bとしては、本件請求は甲社定款9条の趣旨に反するため、許されないと主張する。

甲社定款9条は、会社法174条に基づき定められたものであるため、174条と同趣旨である。174条の趣旨は、相続による株式の一般承継については譲渡制限規制(134条)が及ばないことに着目し、会社にとって好ましくない者が株主となることを防ぎ、既存株主の利益を保護することにある。

そうすると、174条が想定するのは、相続により新たに株主となる者であり、既に株主である者が相続により株式を承継する場合には、その趣旨は及ばないというべきである。

  本件で、Bは既に甲社株主であり、Aから株主を承継したとしても、174条、甲社定款9条の趣旨たる会社にとって好ましくない者が株主となるという事態にはならない。

  したがって、Bに対する本件請求は、甲社定款9条の趣旨に反し、許されない。

2 また、Bは、本件請求は売渡請求権の濫用であるため許されないと主張する。

  174条の趣旨である会社にとって好ましくない者を会社から排除するという鑑みれば、特段の事情がない限り、相続人が有する全株式がその対象となるはずである。しかし、本件では、B保有株の450株のうち、401株についてのみ売渡請求がなされている。これは、Cが代表取締役の地位にとどまるため、議決権の過半数を確保するという支配権維持目的でなされたものであり、特段の事情とはいえない。

  したがって、B保有株式の一部についてのみなされた本件請求は、売渡請求権の濫用として許されない。

3 なお、250株分については、Aがそもそも保有していた株式であるから、この部分についても売渡請求をすることも許されない。

                                  以上

 (※3は、本件請求はAからの相続株式についてのみ請求されているので、明確に誤り。)

 

 

 

 

 

 

H30司法試験民法再現答案

※設問1は京大ロー系が有利な問題だったらしいですが、設問2・3でそのアドはすべて失われました。論パ貼り職人にはつらい試験でした。

第1 設問1

1 BはAに対して、売買契約(民法(以下法名省略)555条)に基づく代金支払請求を行っているところ、本件では目的物たる松茸5㎏と代金50万円の合意が成立しているため、請求原因を満たす。

2 Aは、松茸5㎏が引き渡されていないため、同時履行の抗弁権(533条)により、代金支払を拒むことが考えられる。もっとも、本件では松茸5㎏は何者かに盗み出されており、松茸の引渡しは履行不能(543条)であるため、同時履行は不可能であるとも思える。

  もっとも、Aとしては、松茸5㎏の引渡しは種類物債権(401条1項)であるところ、未だ松茸5㎏は「特定」していないため、Bはなお引渡債務を負うから、同時履行の抗弁権は認められると反論する。そこで、本件において松茸5㎏特定のための「必要な行為を完了し」たといえるか検討する(401条2項)。

(1) 本件では、松茸5㎏の引渡しはB所有の乙倉庫で行うとの「特段の合意」(483条)がなされていたため、松茸の引渡しは取立債務であった。取立債務においては、単に引渡しの準備が整ったことを通知するのみならず、他の種類物と区別できるよう分離されて初めて、「必要な行為を完了し」たとして、特定がなされると考える。

(2) 本件では、Bは松茸5㎏の箱詰めを行っており、他の松茸と判別可能な状態に分離した上で、引渡しの準備ができたとの通知をAに行っている。したがって、松茸5gは特定されたといえる。

(3) そうすると、特定物たる松茸5㎏が盗難により滅失しているため、引渡債務は履行不能となっている。したがって、Aの同時履行の抗弁権は認められない。

3 そこで、Aとしては、履行不能に基づく解除(543条)により、代金支払債務も遡及的に消滅するため、代金を支払う必要はないと主張することが考えられる。かかる主張が認められるためには、履行不能がBの「責めに帰すべき事由」によることが必要である。では、Bに「責めに帰すべき事由」は認められるか。

 (1) 「責めに帰すべき事由」とは、故意、過失及び信義則上これと同視すべき事由をいう。ここで、履行補助者を用いている場合、債務者は履行補助者により利益を得ている以上、不利益も負担すべきであるという考えから、履行補助者の故意・過失も信義則上同視すべき事由に含まれると考える。

 (2) 本件で、Bは収穫期に雇っているCと共に作業を行っているため、CはBの履行補助者である。

  そして、CはBの指示により、乙倉庫を二重に施錠することで松茸5gを保管する善管注意義務(400条)を負っていたところ、平成29年9月22日、これをうっかり忘れて簡易な施錠しか行っていなかったことから、善管注意義務違反が認められる。

   したがって、Bには「責めに帰すべき事由」が認められるとも思える。

 (3) もっとも、本件では、AB間の約定により、引渡日は平成29年9月21日であったところ、Aが乙倉庫に来なかったという事情がある。この時点で、Aには受領遅滞(413条)が生じている。受領遅滞責任は、債務者に過度の負担を負わせないために設けられた法定責任であり、受領遅滞があった日以降は、債務者は目的物の保管につき、善管注意義務ではなく、自己物に対する注意義務(659条参照)を尽くせば足りると考えられる。

   本件で、Cが簡易な施錠を行ったのは、受領遅滞後の平成29年9月22日であり、簡易な施錠を行ったことをもって、自己物に対する注意義務は尽くされたといえる。

   したがって、Bには「責めに帰すべき事由」が認められない。よって、Aの主張は認められない。

4 そして、本件松茸5㎏の引渡債務は、盗難という当事者双方の責めに帰すことができない事由により消滅しており、かかる債務は物権の移転を目的とするものであるから、債権者主義(534条1項)の適用により、売買代金債務は存続する。

  よって、BはAに対して、代金支払請求を行うことができる。

第2 設問2

1 小問(1)

(ア)の発言は、換言すると、AD間の所有権留保売買契約により、甲トラックの所有権はAにあるため、Dは収去権限を有さないというものである。かかる主張が認められるかは、所有権留保売買契約の法的性質によるため、検討する。

 (1) 売買契約の形式を重視する立場からは、甲トラックの所有権はなおDに留保されているため、所有権がAに移転しているとのDの主張は認められず、Dは収去権限を有するになる。

 (2) もっとも、所有権留保の実質は、売買代金の担保にあり、所有権留保売買契約により、売主は一種の担保権を取得するものと考えるべきである。そうすると、本件所有権留保売買契約により、甲トラックの所有権はAに移転し、Dは担保権を有するにとどまる。

   したがって、Dは甲トラックについて収去権限を有さないため、Dの主張は認められる。

 (3) なお、AD間の特約④は、甲トラックの改造を禁じるものであるが、Aは所有権に基づき本来自由に甲トラックを改造できるにもかかわらず、これができないとされていることは、甲トラックの所有権を有するのはAではなくDであるとの判断に結びつく事情といえる。もっとも、これは、甲トラックに係る担保価値を減少させないための特約とも評価できるため、この一事をもって、上記判断が覆ることはない。

2 小問(2)

(イ)の発言は、換言すると、甲トラックに自身の登録名義が残っている一事をもって、Dが収去義務を負うことはないというものである。Eの請求が認められるためには、Dに収去義務が存することが必要であるから、かかる主張が認められるかについて検討する。

 (1) これについて、所有権を侵害されている者にとっては、トラックの登録名義を確認することでしか収去請求の相手方を知ることができない。また、所有権留保売買契約という性質上、登録名義をなおDのままにしなければならなかったとしても、それは当事者間の事情にすぎず、これを所有権侵害の相手方に主張することはできないというべきである。

   そうすると、Dは、所有権喪失を主張する正当な利益を有する「第三者」(登録名義制度による動産であるため、177条)には当たらず、所有権の喪失をEに対抗できないと考える。

 (2) したがって、Eの請求は認められる。

第3 設問3

1 本件遺言の解釈

 (1) 本件遺言は、Aの積極財産のうち、1200万円をFに、600万円をGに相続「させる」としているところ、かかる相続「させる」旨の遺言は、遺言による相続分の指定(902条1項)と解釈すべきである。

 (2) また、本件遺言は、Hに200万円を与えるとしている。ここで、HについてはF,Gとは異なり、

「させる」ではなく「与える」という文言を用いていること、「廃除の意思を変えるものではない」としていることを併せて考えると、Cとしては、Hが廃除により相続人ではないことを前提として、200万円を遺贈(964条)したものと解釈すべきである。

 (3) (2)より、Cの相続人はF、Gのみであり、(1)に照らすと、相続分は、Fが3分の2、Gが3分の1であると解釈すべきである。

2 FのGに対する請求

  Fとしては、Cの代わりにGに支払った300万円のうち、折半した150万円について、Gに対して支払ってほしいと考える。もっとも、前述のように、相続分はFが3分の2であり、Gが3分の1である。また、積極財産をより多く相続したものが、消極財産についてはこの限りではないという主張を行うことを認めるべきではない。

  したがって、FはGに対して100万円に限り、支払を求めることができる。

                                   以上

 

 

H30司法試験行政法再現答案

※墓地埋葬法に需給調整の目的があることを知らなかった者が書いた答案です(後々聞くところによると百選掲載判例だったらしい。かなしい)(あと設問よく読んでなかったからB市側の立場に立たないといけないのにB市側の反論潰しているところあるよ。何やってるんだよ団長……!)

設問1

第1 小問(1)

1 原告適格(行政事件訴訟法(以下、行訴法)9条1項)の判断基準

  「法律上の利益を有する者」(行訴法9条)とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的侵害されるおそれのある者をいう。そして、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的・抽象的公益に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護する趣旨を含むときは、かかる個別的利益をここにいう「法律上保護された利益」に当たると考える。

  処分の名宛人以外の原告適格については、行訴法9条2項に基づき判断する。具体的には、①不利益要件、②保護範囲要件、③個別保護要件を検討しつつ、原告適格の有無につき判断を行う。

2 Dについて

 (1) 不利益要件

   Dとしては、墓地経営に係る営業上の不利益(営業利益)を主張することが考えられる。

 (2) 保護範囲要件

   法は営業利益を保護範囲に含めているか。本件許可を定める法10条は単に墓地を経営しようとする者は都道府県知事の許可を受けなければならないと定めるのみであり、この点について明らかにしない。もっとも、法1条は、目的として「墓地…の管理…が、…支障なく行われること」を掲げており、墓地経営に係る利益を保護範囲に含めることを前提にしているといえる。また、法10条を受けて規定された「関連法令」たる本件条例は、許可申請者に対して墓地周囲100メートル区域の状況を明らかにした図面の提出を求めており(本件条例9条2項(4))、墓地経営区域に係る周囲の墓地の有無を許可の判断材料していることが読み取れるから、法は営業利益を保護範囲に含めているといえる。

   したがって、保護範囲要件を満たす。

 (3) 個別保護要件

   では、法は営業利益を個別的利益としても保護する趣旨か。本件条例は、許可申請者に対して説明会の開催を求めており、その内容の報告を求めているから(本件条例6条)、周辺の墓地経営者は、説明会において自己の不利益を主張する機会を与えられているといえるため、法は他の墓地経営者の営業利益を個別に保護する趣旨であるといえる。

   したがって、個別保護要件も満たすので、Dは「法律上の利益を有する者」として、原告適格が認められる。

 (4) B市の反論

  ア Dは法1条及び本件条例9条から、営業利益が法の保護範囲に含まれていると主張する。しかし、法1条の目的から直ちに営業利益が保護範囲に含まれていると導き出すのは難しい。また、本件条例9条2項(3)についても、同項(2)が墓地の構造設備を明らかにした図面の提出も求めていることや、同条例13条2項が飲料水汚染をしないことを求めていること、14条が排水設備等について定めていることを併せると、これは周囲の環境を保護する趣旨の規定と読むべきであり、営業利益については保護範囲に含めていないというべきである。

  イ また、仮に営業利益が保護範囲に含まれていたとしても、本件条例は説明会の結果を反映することを都道府県知事に求めていないから、本件条例6条をもって営業利益が個別に保護されていると評価することはできない。その他、営業利益を個別保護していると読み取れる規定もない。

  ウ したがって、Dの原告適格は認められない。私見もこれに従う。

2 Eについて

 (1) 不利益要件

Eは、生活環境及び衛生環境の悪化という不利益(住環境利益)を主張することが考えられる。

 (2) 保護範囲要件

   許可を定める法10条は住環境利益を保護範囲に含めているか明らかにしていない。もっとも、法1条は目的として「墓地…の管理…が、…公衆衛生…の見地から、支障なく行われること」を掲げており、住環境利益を保護する趣旨であることが読み取れる。また、関連法令である本件条例9条は、許可申請者に対して墓地の構造設備を明らかにした図面の提出等を求めていること(同条2項(2))、同条例13条が、墓地が住宅等から100メートル以上離れていることを求めていること(同条1項(1)(2))、飲料水を汚染しない場所への設置を求めていること(同条2項)、一定の構造設備を備えていること(同条例14条)などを求めていることにかんがみると、法は住環境利益を保護範囲に含めているといえる。

   したがって、保護範囲要件を満たす。

 (3) 個別保護要件

   では、法は住環境利益を個別に保護する趣旨も含むか。

   不衛生な環境は、反復継続することによって、住民の生命・身体にも影響を及ぼし得ること、墓地の設置について少なくとも100メートルの距離制限を本件条例13条は設けていることからすれば、法は墓地による影響が直接及ぶ範囲に居住する者の住環境利益を保護する趣旨であるといえる。

   Eは本件土地から80メートルのところに障害福祉サービス事務所を構えており、墓地が経営された場合にはその影響が直接及ぶ範囲にいるといえるため、Eの住環境利益は個別に保護されているといえる。

   したがって、Eの原告適格は認められる。

 (4) B市の反論

   B市は、Eは事務所に居住しているわけではないのであるから、墓地による影響が直接及ぶものに当たらないと反論することが考えられる。しかし、Eの事務所は定員に近い利用者が日常的に利用しており、これらの者に対して直接影響が及ぶため、かかる反論は認められないと思われる。私見もこれに従う。

第2 小問(2)

1 本件条例13条違反との主張

 (1) Eは、本件事務所が本件土地の100メートル以内に存在することから、本件許可は本件条例13条に違反すると主張することが考えられる。

   これに対して、B市としては、「公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認められる」(同条但書)として、許可は適法であると反論したい。もっとも、前述のように本件事務所は日常的に定員に近い利用者が利用しており、支障が無いと判断することは難しいと思われる。

 (2) もっとも、Eはかかる違法事由を主張することはできないと考える。本件で、EはDの依頼を受けて、特に移転を行う必要はなかったにもかかわらず事務所を移転させている。つまり、Eとしては専ら本件許可を妨げる目的で事務所を開業したものと認められ、このような背信的悪意による権利主張は、権利濫用として認めるべきではないためである。

2 本件墓地の実質的経営者はAではなくCであるとの主張

 (1) 墓地経営者は、原則として地方公共団体とされ、例外的に宗教法人が行うことも可能とされている(本件条例3条1項(1))。

   本件でも、形式的には宗教法人であるAが許可申請を行っている。もっとも、本件土地の用地買収や造成工事に係る費用は全額Cが無利息で融資しており、また、住民への説明会でも、AとともにCの従業員がこれを行っている。また、そもそも本件墓地の開設は、CがAに対して提案したものであった。これらの事情を併せると、実質的に、本件墓地開設はCが主導しており、実質的経営者はAではなくCであると評価できる。

   そうすると、本件許可は、本件条例3条1項(1)に違反することとなる。

 (2) もっとも、Eはかかる違法を主張できない。本件墓地の実質的経営者がAかCかは、Eの法的地位に影響を及ぼすものではないためである(行訴法10条)。

設問2

第1 周辺住民の反対運動が激しくなったという理由

1 Aは、このような理由で不許可処分をすることは裁量権の逸脱・濫用であり違法であると主張する。

 (1) 法10条は、墓地を開設しようとする者に対して「許可を受けなければならない」と規定するにとどまり、市長に対して許可を義務付けるものではない。また、許可に当たっては周辺の状況等を踏まえた専門的判断を要するから、法は許可に当たって市長に裁量を与えているものといえる。

   もっとも、本件では、かかる許可にあたって、その基準となる本件条例が制定されている。そのため、本件条例が審査基準(行政手続法5条1項参照)と同様の機能を果たす結果、かかる裁量も本件条例の基準に羈束される。その結果、基準を機械的に適用することが不相当と認められる特段の事情がない限り、基準外の事由を理由に不許可処分を行うことは、裁量権の濫用と評価される。

 (2) 本件では、「周辺住民の反対運動が激しくなった」という理由から、不許可処分がなされているところ、このような事由は本件条例13条に掲げる基準にはない。そのため、B市は基準外の事由を理由に不許可処分を行ったということになる。そして、本件では基準を機械的に適用することが不相当と認められる特段の事情もない。

   したがって、本件不許可処分は違法である。

2 このような主張に対して、B市としては、この理由は本件条例14条2項の基準である「植栽を行う等周辺の生活環境と調和するよう配慮」することに反していることを示すものであると反論することが考えられる。もっとも、このような反論は、理由提示として不十分であるため、認められない。

  不許可処分を行うに当たっては、行政の恣意抑制及び被処分者への不服申立ての便宜の観点から、具体的な理由が示されなければならない(行政手続法8条参照)。そして、審査基準が定められているときは、その適用条項及び具体的な事由も併せて提示することが求められる。

  しかし、本件では、具体的な事由はおろか、本件条例の適用条項すら示さずに、上記の理由により不許可処分が行われている。したがって、仮に配慮を尽くしていないことが事実であったとしても、理由提示として不十分であるため、手続的に違法である。

第2 墓地供給が過剰であるとの理由

1 Aとしては、この理由についても、本件条例の基準外の事由であり、基準を機械的に適用することが不相当と認められる特段の事情はないとして、本件不許可処分は裁量権の逸脱・濫用として違法であると主張する。

2 これに対して、B市は、本件基準を機械的に適用しない特段の事情が認められるため、適法であると反論する。

  B市内には複数の墓地があるが、いずれも供給過剰状態となっており、Aの新規参入を認めると、Dのような小規模墓地の経営が破綻することが予見されている。そのため、本件条例の基準を機械的に適用すると、このような事態が生じるため、これを避けるため基準を適用しない特段の事情が認められる。

  Aとしては、前述のように、墓地経営者の営業利益は法の保護するところではないとしたにもかかわらず、このような営業利益を持ちだして不許可処分とするのは妥当ではないと再反論することが考えられる。これについては、小規模墓地が経営破綻により放置され、排水路などを整備する者がいなくなると、周辺の住環境に悪影響を及ぼすおそれがあり、また、墓地の経営破綻により無管理墓地が出現することは、国民の宗教感情に反する事態であるといえるため、実質的には宗教感情と住環境保護を目的としているから、かかる再反論は妥当しないと考える。

3 したがって、かかる理由に基づく不許可処分は適法である。

                                   以上

H30司法試験憲法再現答案

※法律意見書書くの求められていたのにそれを無視して三者間形式で書いてしまったクソ答案です。テンパりすぎて内容も酷いので、ゴミ答案を見ると蕁麻疹が出るなど体調を崩しやすい方はご覧にならないことをオススメします(責任取れないよ)。

 

第1 購入側からの問題点、想定反論、私見

1 購入側の憲法上の問題点

  購入側としては、本件条例7条、8条は、購入者の知る自由を侵害するため、憲法21条1項に反し違憲であると主張する。

(1) 知る自由は、表現の自由を受け手の側から再構成したものであり、憲法21条1項により保障される。

(2) 本件条例7条は、規制図書類を定め、事業者にこれを販売することを禁止・制限することにより、購入者が規制図書類にアクセスすることを著しく困難にしているた

 め、知る自由に対する制約が認められる。

(3) そして、本件制約は正当化されない。

 ア 知る自由は表現の自由の一類型であるところ、表現の自由は表現を通して自己の人格を発展させる自己実現の利益と、表現を通じて民主政に関与する自己統治の利益を有する重要な権利である。また、特に青少年は、販売自体を受けることができなくなるため、規制態様は強度であるといえる。

   したがって、審査基準は厳格審査基準が妥当し、目的がやむにやまれぬほど必要不可欠なものであり、手段が最小限度であることを要すると考える。

 イ 本件条例の目的は、性風俗に係る善良な市民の価値観を尊重するとともに、青少年の健全な育成を図ること(本件条例1条)にあり、地方公共団体は風紀維持も職責であることから、目的はやむにやまれぬほど必要不可欠と言い得る。

   しかし、性風俗保護や青少年保護について、わいせつ文書に係る罪(刑法175条)で刑法は保護を図っており、それ以上に独自に規制を置いて購入を不可能とすることは、過剰な規制といえ、必要最小限度の規制とは言い難い。

   したがって、本件制約は正当化されない。

2 想定反論

(1) 知る自由が憲法21条1項により保障されることは認める。しかし、青少年についてはその未熟さから特別の保護を要するのであり、保障の程度は低いものと言わざるを得ない。また、18歳以上の者についても、青少年保護の観点から、知る自由がある程度制約されることもやむを得ない。

(2) また、本件制約の対象は性表現に係る図書であるところ、性表現は自己統治の利益は勿論のこと、自己実現の利益についても乏しく、重要な権利であるとはいえない。

  そのため、審査基準は緩やかな基準が妥当する。そして、規制の必要性は肯定されるし、18歳以上の者が規制図書を購入することは何ら禁止されていないのであるから、合理的な範囲の規制といえるため、本件条例は合憲である。

3 私見

 (1) 知る自由が憲法21条1項により保障されること、本件条例が知る自由を制約することについては、購入者側の主張を支持する。

 (2) 正当化

  ア 反論の通り、確かに、青少年はその精神的未熟さから、特別の保護を要する。もっとも、本来処罰の対象とならないものまで規制図書類とし、そのアクセスを不可能とすることは、青少年保護という目的を見ても規制として広汎すぎるといえる。また、反論は性表現は自己実現の利益すら乏しいとしているが、性表現も情愛などを通して自己の人格形成に寄与し得るものであり、保障の程度が著しく低いものとはならない。

  イ したがって、審査基準としては、中間審査基準によるべきであり、目的が重要で、目的達成の手段として実質的関連性が認められる場合に限り、制約は正当化されると考える。

 (3) 本件

   本件条例の目的が重要なことは、疑いようがないので、認められる。

   また、性風俗や青少年保護の観点からは、ある程度隔離することも必要であるといえ、目的達成の手段として、必要性も肯定し得る。もっとも、規制図書類は、本件条例7条によると一部であっても7条(1)(2)に規定する描写があれば規制が及ぶことになり、9割以上規制とは関係のない内容であっても、その一部故に購入が難しいこととなり、規制として過剰と言わざるを得ない。また、B市長が内容を精査した上で、規制図書類に当たるかを判断する方法によっても、十分足りるといえる。

   したがって、手段としての適合性が認められないから、本件条例は制約として正当化されない。

   よって、本件条例は違憲である。

   また、18歳以上の者の知る自由についても、違憲な法令により制約を行うことは許されるべきではなないため、18歳以上の者の知る自由との関係でも違憲である。

第2 販売側からの問題点、想定反論、私見

1 販売側の憲法上の問題点

 (1) 明確性原則(憲法31条)違反

   規制図書類の販売等は、罰則の対象となっている(本件条例15条)。そのため、販売等を行うと症が規制図書類に当たるか否かは、明確にされなければならない(適正手続、憲法31条)。

   しかし、本件条例7条は、規制図書類を「殊更に性的感情を刺激する」や「卑わいな」といった、主観的、曖昧な文言を用いて規制図書類を定義しており、明確性原則に反し違憲である。

 (2) 営業の自由侵害

   また、本件条例8条は、販売者の営業の自由(憲法22条1項)を侵害し、違憲である。

  ア 憲法22条1項は職業の開始、選択、廃止について職業選択の自由として保障するものである。そして、実際の活動について保障が及ばないとするなら、職業選択の自由として不十分であるので、営業の自由についても憲法22条1項により保障される。

  イ 本件条例8条は、販売者に対して規制図書類の販売等を禁止・制限するものであり、営業の自由に対する制約が認められる。

  ウ そして、本件制約は正当化されない。

   (ア) 職業は単なる生計維持の手段のみならず、個人の人格利益と不可分の関連性を有する重要な権利である。また、本件制約は罰則をもって規制図書類の販売等を禁止・制約するものであり、規制態様は厳しいものといえる。そして、本件制約の目的は、少なくとも積極目的ではない。

     したがって、審査基準は中間審査基準が妥当する。

   (イ) 本件条例の目的は前述の通りであり、目的として重要なことは認められる。

     しかし、一定区域の販売が禁止される販売者については、青少年等の目につかないような措置を採ることによっても十分目的達成は可能といえる。また、それ以外の販売者については、そもそも隔離措置を採る必要があるのか疑問であり、隔離措置のため多額の費用支出を要求することは過剰といえる。

    したがって、本件条例は正当化されない。

2 想定反論

(1) 明確性原則について、一般人の理解を基準とすれば、何が「殊更に性的感情を刺激する」かや、「卑わい」かは十分判別可能であるので、違憲とは言えない。

(2) また、営業の自由侵害についても、営業の自由はその性質上社会相互関連性の強い権利であり、一定程度制約されることはやむを得ないといえる。そして、性風俗保護・青少年保護という本件条例の目的は正当なものであり、条例の規制は合理的な範囲を超えるものではないから、制約として正当である。

3 私見

 (1) 明確性原則について

   反論では、一般人の理解をして本件条例7条の文言は十分判別可能としている。判例も、一般人の理解を基準に明確性原則違反を判断しているため、かかる基準を用いるのは正当である。

   もっとも、本件条例は、刑法175条に係るわいせつ文書以外の図書を規制するため設けられたものであるところ、刑法175条の「わいせつ文書」に当たらず、本件条例の「殊更に性的感情を刺激する」「卑わいな」図書であるか否かは、もはや各人の価値観に基づいた判断によらざるを得ず、一般人をして判別可能であるとはいえない。

   したがって、本件条例7条は明確性原則に反し違憲である。

 (2) 営業の自由侵害について

  ア 営業の自由が保障されること、本件条例が営業の自由を制約することについては、販売者側の主張を支持する。

  イ 正当化

   (ア) 確かに、営業の自由はその性質上社会相互関連性の強い権利であるから、一定程度制約を受けることはやむを得ない。もっとも、罰則をもって販売を禁じることは強度の制約といえるし、また、本件条例の目的は積極目的ではないことも踏まえると、なお中間審査基準により違憲性を判断すべきである。

   (イ) 前述のように、本件条例の目的が重要なのは疑いようがない。もっとも、本件条例7条の規制図書類は一部でも同条(1)(2)の掲げる描写が含まれていれば直ちに規制図書類に含まれることとなり、事業者の販売できる図書を過剰に制限するものといえる。また、販売が禁止される地域については、販売自体を禁じなくとも、隔離して青少年等の目に触れないよう必要な措置を行うように定めれば足りるし、それ以外の地域については、そもそも青少年が訪れる可能性を視野に入れていないのであるから、多額の費用を支出させてまでの隔離措置を講じる必要はないといえる。

     したがって、本件条例は正当化されない。

                                    以上