底辺ロー卒生のブログ(答案の墓場)

H30から司法試験を受けている底辺ロー卒生が書いた答案UPしたりして、閲覧している皆様にご批評して頂くためのブログ

H27年度京大ロー入試民訴法再現答案

※点数は 60/100 でした。

第1 問1

1 本件において、XとYの間で売買代金支払の訴え(本件訴え)が係属しているところ、YはXに対して、同一の売買契約に基づく売買代金債務不存在確認の訴え(以下、後訴)を同一裁判所に提起している。そこで、かかる後訴は二重起訴の禁止(142条)に抵触し、不適法ではないか。同条にいう「事件」の判断基準について、明文がないことから検討する。

  (1) この点について、同条の趣旨は同一の訴えが提起されることによって生じる被告の応訴の煩や訴訟不経済、矛盾判決といった弊害を防止することにある。

   そこで、「事件」の判断基準については、①当事者及び②審判対象の同一性から判断すると考える。

  (2) これを本件について検討する。

    まず、本件訴えの原告はX、被告はYであるところ、後訴の原告はY、被告はXである。

    これは、原告と被告が入れ替わっただけで当事者がX,Yであることに変わりはないから、両訴において当事者は同一である(①)。

    次に、本件訴えの訴訟物は売買契約に基づく売買代金支払請求権であるのに対し、後訴の訴訟物は売買代金支払債務であるから、一見すると審判対象は異なるようにも思える。

    しかし、債務不存在確認の訴えは給付の訴えの反対形相であるため、訴訟物は両訴ともに売買代金支払請求権である。

    したがって、審判対象の同一性も満たす(②充足)。

2 よって、①・②を満たすため、後訴は二重起訴の禁止に抵触し、不適法である。

第2 問2

1 本件におけるYの陳述は、XのYに対する売買代金支払の請求を拒むものである。そこで、かかるYの陳述が否認か抗弁のいずれに当たるかについて検討する。

  (1) そもそも、否認とは相手方の主張する事実と一致しない、相手方が証明責任を負う事実を否定する陳述であり、抗弁とは相手方の主張する事実と一致する、自己の証明責任を負う事実を主張する陳述である。両者は、自身もしくは相手方のいずれが証明責任を負うかという点で異なる。

    そして、証明責任の分配については、分配基準として明確であることを理由に、各当事者は実体法の要件を基準として、自己に有利な法律効果を発生させる要件について証明責任を負うと解される。

  (2) これを本件についてみると、Yの陳述はXのYに対する500万円の売買代金債権の存在を認めた上で、Xが甲の引渡しをするまで支払いをしないということを内容とする。

    そして、Xが甲の引渡義務を負っていることは、引渡しを受けるYに有利な法律効果であるため、この点についての証明責任はYが負う。

    したがって、Yの陳述は抗弁としての意義を有する。

2 そして、Yの抗弁は同時履行の抗弁(民法533条)であるところ、かかる抗弁は権利抗弁であると解されるので、裁判所はYに権利行使の意思表示がない限り、これを判決の基礎とすることができない。

第3 問3

 1 本件第2回口頭弁論期日Yの主張は、Xと売買契約を締結したのはYではなくZであるというものである。ここで、売買契約の相手方がYであるという事実はYに売買契約の効果を及ぼす点でXに有利な法律効果をもたらすものであるため、この点についてはXが証明責任を負う。

   したがって、Yの主張は積極否認という意義を有する。

 2 もっとも、Yは第1回口頭弁論期日においてXと本件売買契約を締結したことを認める旨の主張を行っており、この主張と第2回口頭弁論期日における主張は矛盾する。

   そのため、第1回口頭弁論期日における主張との関係で、第2回口頭弁論期日における主張は自白の撤回とならないか。

  (1) まず、第1回口頭弁論期日の主張について、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実についての地陳述たる自白(179条)が成立するかについて検討する。

   ア まず、自白の成立する事実の範囲について検討する。

この点、訴訟物たる権利義務関係の存否を直接左右する主要事実については、紛争解決のため自白の拘束力を及ぼすべきである。

     他方で、証拠と同様の働きをする間接事実や、補助事実についても自白が成立すると解すると、裁判所の自由心証主義(247条)を事実上制限することになり妥当ではない。

     したがって、自白は主要事実についてのみ成立し、間接事実や補助事実については成立しないと考える。

   イ 次に、自己に不利益な事実とは何かが問題となるも、基準として明確性であるとの理由から、相手方が証明責任を負う事実をいうと考える。

   ウ これを本件について見ると、売買契約締結の事実は売買代金支払請求権の存否を直接左右するものであるから主要事実に当たる。そして、かかる事実は売買代金の支払いを求めるXに有 利な法律効果をもたらすものであるため、Xが証明責任を負う。

     したがって、Yの第1回口頭弁論期日における主張は、自白に当たる。

  (2) そうだとすれば、Yの第2回口頭弁論における主張はかかる自白の内容を否定するものであるため自白の撤回に当たるところ、かかる自白の撤回は認められるか。

   ア この点について、自白により生じる不要証効、審判排除効を前提に訴訟追行した相手方の信頼を保護するため、原則として自白の撤回をすることは認められない。

     ただし、自白の撤回を禁止する目的が相手方の信頼保護にあることから、①相手方の同意がある場合や、②刑事上罰すべき他人の行為により自白行った場合には、例外的に自白の撤回をすることは認められると考える。また、①自白の内容が真実に反し、かつ錯誤に基づいてこれを行った場合にも認められると考える。

   イ しかし、本件ではYに①~③のような事情は見当たらない

     したがって、自白の撤回は認められないから、Yの第2回口頭弁論期日における主張は主張自体失当である。

以上