底辺ロー卒生のブログ(答案の墓場)

H30から司法試験を受けている底辺ロー卒生が書いた答案UPしたりして、閲覧している皆様にご批評して頂くためのブログ

H27年度京大ロー入試商法再現答案

※第1問で問題文読み間違えていて、最後の方で気付いて焦った記憶しかない答案です。

 点数は 55/100 でした。

第1問

第1 (1)について

1 本件において、P社監査役は取締役Cに対して会社法(以下法名省略)423条に基づく損害賠償請求を行うことが考えられる。

  本件では、P社取締役Bが会社資本5億円をギャンブルに費やしており、P社に損害が生じている。

  そして、CはP社取締役として他の取締役を監視する義務を負うところ(362条1項2号)、CはBの費消行為を見逃しており、かかる義務を懈怠しているように思える。

  もっとも、Bの費消行為については取締役会に上程されていないところ、Cは非上程事項についてまで監視義務を負うのか。

(1) この点、366条1項が各取締役に対して取締役会招集権限を与えたのは、上程された事項以外についても他の取締役が問題行為を行っていた場合には、自ら招集をさせ取締役会に上程させるためであると考えられる。

そうだとすれば、取締役会に上程されていない事項についても、各取締役は監視義務を負うというべきである。

(2) したがって、本件でもCはBの費消行為について監視義務を負っているため、かかる義務について任務懈怠がある。

2 よって、Cは任務懈怠責任を負うため、P社監査役の上記請求は認められる。

第2 (2)について

 1 設問前段

   本件において、FはAに対して429条1項に基づく損害賠償請求を行うことが考えられる。

  (1) この点について、同項の責任は、経済社会における株式会社の地位及び会社に占める取締役の職務の重要性にかんがみ、第三者保護のために取締役に課された法的責任であると考える。

    そこで、「悪意又は重過失」は任務懈怠について存すれば足り、「損害」は広く直接損害・間接損害の双方が含まれると考える。

  (2) これを本件について検討する。

    まず、Aはリスクの大きい事業に乗り出し、これに失敗して支払不能状態に陥っているところ、通常リスクの高い事業を行うに際しては事前に市場動向等をリサーチして行う必要がある。しかし、Aがかかるリサーチを行ったという事情はないから、少なくとも重過失による著しく不合理な業務執行を行ったといえ、善管注意義務(330条、民法644条)違反が認められる。

    したがって、かかる任務懈怠について重過失が認められる。

    また、かかる任務懈怠によりFは債権回収ができなくなるという間接「損害」を被っている。

    なお、FはP社債権者であるため「第三者」に含まれることに問題はない。

  (3) また、本件ではAの退任登記がなされていないところ、かかる不実の登記について、故意又は過失があれば、かかる不実の登記を善意の第三者に対抗することができない(908条2項)。

   ア ここで、退任登記は業務執行に関わる事項であり、退任する取締役自身がこれを行うことはできないため、「登記をした者」に当たらないから同項を直接適用することができない。

     しかし、同項の趣旨は、虚偽の外観を作出した者に外観通りの責任を負わせることにあるところ、退任取締役が取締役の登記を残存させることに明示的に承認していた場合には、同項を類推適用し、退任取締役にも429条1項の責任等を負わせることができると考える。

   イ 本件では、Aが登記を残存させることおにつき明示的な承諾を与えていたという事情は見当たらない。

     もっとも、Aが退任後も顧問としてP社に居座ったこと、顧問という名でありながらその実質は代表取締役であった時と同様、P社の運営に指示を与え、主要な地位を占め続けたことにかんがみれば、明示的な承諾を与えていた可能性が高いといえる。

     したがって、かかる場合には、FはAに対して上記請求を行うことができる。

 2 設問後段

   退任登記がされていた場合とされていなかった場合とで、FのAに対する賠償請求の可否に違いは生じないと考える。

   この点について、退任登記の趣旨は、取締役の責務の重要性にかんがみ、登記をした後には取締役が負う責任から解放することにある。

   もっとも、退任登記をしたことそれだけをもって責任の対象とならないとすれば、登記をすることによって容易に責任を回避することができることになり妥当ではない。

  また、429条1項の責任は、会社の経済社会における影響力の大きさ及び会社の行為が取締役の職務執行に依存していることから認められる。

  そうだとすれば、現実に取締役としての職務を行っている者については同項を類推適用できると解すべきである。

  したがって、Aが退任後も取締役の時と変わりなく職務を行っている本件では、なお429条1項の責任を負うため、前述の結論に至る。

 

 第2問

第1 (1)について

本件において、BはAに対して売買代金債権を行使しているところ、AがBの売買代金債権確保のために振り出した本件手形はCにより持ち出されてしまっている。

そのため、AがBの求めに応じて売買代金を支払った後に、Cその他本件手形の所持者から手形金の支払いを求められ、二重に支払いをしなければならないことになりかねない。

  そこで、AはBに対して手形に受戻証を記載して返還することを求め、これがなされるまで代金の支払いを拒むことができる(受戻抗弁、手形法(以下法名省略)77条1項3号、39条1項)。

第2 (2)について

1 本件において、AがEの請求に対して手形金を支払わなければならいかは、Aが手形債務を負っているかによる。

 (1) この点について、本件ではAがBに対して振り出した手形に対し、手形の裏書譲渡を行うにつき無権限であるCがDに対して裏書をし、かかる手形がEにさらに裏書譲渡されている。

   ここで、Cの無権限での裏書行為が偽造と無権代理行為のいずれに当たるかが問題となるも、転々流通する手形の性質から、両者の区別は手形上の記載によって決すべきであると解される。そして、本件手形には単に「B」と機関方式で裏書されているため、C裏書行為は偽造に当たる。

   したがって、被偽造者であるB及び振出人であるAは、追認(民法116条類推適用)をしない限り手形債務を負わないのが原則である。

 (2) もっとも、かかる原則を常に貫くと、Eの取引の安全が害されることになる。

  ア そもそも、偽造と無権代理はいずれも無権限者による本人名義の手形である点において差異はなく、第三者の信頼を保護する必要性は同じである。

そこで、民法表見代理規定の類推適用を認め、第三者において他人に権限があることを信じたことにつき正当な理由のある場合、被偽造者及び振出人は表見代理規定の類推適用により手形上の責任を負うと解する。

    また判例民法が手形の第三取得者のような者を表見規定によって保護される者として予定していないこと等を理由に、「第三者」には偽造の直接の相手方に限られ、転得者は含まれないと考えている。

しかし、手形は転々流通することから、手形の第三取得者についても表見代理による保護の必要性があるため、手形の転得者も「第三者」に含まれると考える。

  イ これを本件についてみると、本件ではDが偽造につき悪意であったという事情はあるものの、Eが悪意であったという事情は特にない。

    したがって、表見代理規定(民法110条)の類推適用により、被偽造者たるB及びAは手形上の責任を負う。

2 そこで、Aは手形振出しの原因であるAB間の売買契約が解除されたことを主張し、手形金の支払いを拒むことが考えられる。

 (1) この点について、手形の無因性(75条2号)から、原因関係が消滅しても、それは人的抗弁(77条1項1号、17条本文)にとどまり、手形債務は存続するのが原則である。

 (2) もっとも、AはEが「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ」(77条1項1号、17条但し書)手形を得たとして、人的抗弁を対抗して支払いを拒むことができないか。同文言の意義が問題となる。

  ア この点について、17条本文の趣旨は、手形の流通促進の見地から手形所持人を保護するという政策目的のため、債権譲渡における抗弁承継の一般原則(民法468条2項)を修正し、抗弁を切断する点にある。

    そこで、同文言は、所持人が政策的保護に値しない主観的事情を有していることをいい、具体的には、所持人が手形を取得するにあたり、手形の満期において、手形債務者が初人の直接の前者に対し、抗弁を主張して手形の支払を拒むことが確実であるという認識をもっていた場合をいうと考える。

  イ これを本件についてみると、Eが上記のような主観を有していたとの事情はない。

    したがって、AはEに対して人的抗弁を対抗することができない。

3 よって、AはEの請求を拒むことができず、手形金を支払わなければならない。