底辺ロー卒生のブログ(答案の墓場)

H30から司法試験を受けている底辺ロー卒生が書いた答案UPしたりして、閲覧している皆様にご批評して頂くためのブログ

【ご報告】H30司法試験短答 結果

 

短答の成績届きました。

 

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何とか足切り通過してました! これで論文採点してもらえます(マークミス怖かった)

 

(以下見苦しい言い訳)

演習不足の民法で完全にテンパってしまい、それが憲法にまで波及してしまいました。憲法では正誤選択問題で反対にして解答してしまうというミスを3つもするという……(憲法は得点源にしてただけにつらい。天皇問題と改正手続問題は絶対許さないから。)

 

合格者平均が128で、Twitterには140点以上ニキ達がゴロゴロいたので、これがどれだけ足を引っ張るか不安ですが、もはや手の出しようも無いので、大人しく祈っていようと思います。

 

H27年度京大ロー入試刑訴法再現答案

※論点どこ……?ってなって度肝を抜かれた記憶しかないです(論パマン並感)
点数は 30/50 でした。

1 目撃状況に関する供述を収集・保全する法的手段

 (1) 目撃状況に関する供述を収集・保全する手段としては、目撃者に任意出頭を求め取調べを行うという方法がある(刑訴法(以下法名省略)223条1項)。

 (2) また、検察官は目撃者が供述を翻すおそれがあり、かつその供述が犯罪の証明に欠くことができない場合には、第一回公判期日前に限り、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる(227条)。

2 目撃状況に関する供述を犯罪事実認定の証拠とする法的手段

 (1) 目撃状況に関する供述を証拠とする方法について、まずは目撃者に証人尋問を行い、証拠とする方法が挙げられる(304条1項)。

 (2) また、目撃者を証人尋問できない場合には、1で述べた証拠保全により得られた供述書ないしは供述録取書を提出するという方法が考えられるが、かかる書面は伝聞証拠に当たるため、原則としてこの方法を採ることはできない(320条1項)。

   その理由は次の通りである。すなわち、供述証拠は知覚・記憶・叙述の過程を経て作成されるものであるところ、その各過程において誤りが生じやすいことから、反対尋問(憲法37条2項参照)等の方法によりその正確性を吟味する必要がある。しかし、伝聞証拠はかかる反対尋問をなすことができないことから、あらかじめ証拠方法からこれを排除する必要があるため、伝聞証拠の証拠能力は否定されるのである。

   もっとも、伝聞証拠すべての証拠能力を否定すると、裁判の迅速な進行が害され、実体的真実の発見(1条)が困難となりかねない。そこで、法は証拠としての必要性があり、かつ信用性の情況的保障が認められる場合には、例外的に伝聞証拠に証拠能力を認めている(伝聞例外、321条以下)。

   そして、裁判官面前調書については321条1項1号、検察官面前調書については同項2号、その他の書面については同項3号がそれぞれ伝聞例外の要件を定めている。

H27年度京大ロー入試刑法再現答案

※点数は 59/100  でした。

第1問

第1 甲の罪責

 1 本件において、甲がXを殴打し死に至らしめた行為に傷害致死罪(205条)が成立しないか。

  (1) まず、甲はXの左側頭部という身体の枢要部に対して殴打行為を加えているため、かかる行為は人の生理機能に障害を与える程度の暴行といえ、「傷害」に当たる。

  (2) 次に、甲はXに傷害を負わせるつもりであったため、傷害の故意はあったと認められるが、死の結果について過失があったかは不明である。

    しかし、傷害致死罪は結果的加重犯であるところ、結果的加重犯においては基本犯の実行行為に重い結果発生の高度の危険性が内包されていることから、重い結果の発生について過失は不要であると考えられる。

    そこで、基本犯の実行行為と重い結果の間に因果関係が認められれば、結果的加重犯は成立すると考える。

  (3) では、本件において上記行為とXの死の間に因果関係は認められるか。

    この点、本件では甲が単独でXを殴打した行為(以下、第一行為)と、甲が乙と共同でXを殴打した行為(以下、第二行為)の両方が存在しているところ、甲はその両方に関与しているので、両方の行為について帰責することができる。

    そして、左側頭部に殴打を受けた者が脳内出血を起こし死ぬことは社会通念上相当であるので、上記行為とXの死の間には因果関係が認められる。

    したがって、上記行為は傷害致死罪の構成要件を充足する。

  (4) もっとも、甲はXがバットを振りかざして飛び出してきたことから上記行為を行っている。そのため、上記行為に正当防衛(36条1項)が成立し、違法性が阻却されないか。

   ア まず、本件では第一行為と第二行為が存在しているところ、両者は共にXに対する傷害の故意の下、時間的・場所的に近接して行われているため、一連の行為として評価すべきであると考える。

   イ 次に、Xは「殺してやる」と叫びながらバットという硬質の凶器を振りかざして甲に向かってきているので、甲の生命・身体に対する「急迫不正」の「侵害」が認められる。

   ウ また、甲は自らの生命・身体を守るために上記行為を行っているため、「防衛のために」上記行為を行ったといえる。

   エ もっとも、第二行為の時点では人数的にXは不利となっており、侵害の意思は失われていたと考えられることから、第二行為の時点で殴打行為は質的にも量的にも過剰であったといえる。

オ したがって、上記行為は過剰防衛(37条2項)として「やむを得ずにした行為」であるとはいえず、正当防衛は成立しない。

 2 よって、上記行為に傷害致死罪が成立し、かかる罪責を甲は負う。なお、後述のように傷害罪の範囲で乙と共同正犯となる。

   そして、上記行為には過剰防衛が成立するので、刑が任意的に減免される。

 3 なお、甲がXのバットを投げ捨てた行為は、物の効用を害する一切の行為たる「損壊」に当たるため、器物損壊罪(261条前段)の構成要件を満たすが、甲はXの侵害を防ぐために上記行為を行っているため、正当防衛が成立し、違法性が阻却される。したがって、器物損壊罪は成立しない。

第2 乙の罪責

 1 乙が甲と共にXを殴打した行為に傷害致死罪の共同正犯(60条、205条)が成立しないか。

  (1)ア この点、共同正犯の一部実行全部責任の原則の根拠は、相互利用補充関係に基づいて特定の犯罪を実現することにある。

そこで、共同意思と共同行為を満たせば共同正犯が成立すると考える。

   イ これを本件についてみると、乙は甲の助けてくれという依頼に承諾し、甲と共にXを殴打していることから、共同意思も共同行為も認められる。

  (2) もっとも、Xの死亡の原因たる脳内出血は第一行為が第二行為のいずれから生じたか不明であるため、「疑わしきは被告人の利益に」の原則から、第二行為にのみ関与した乙はXの死の結果についてまで帰責されない。

  (3) そこで、第一行為についても乙に帰責することはできないか。いわゆる承継的共同正犯の成否が問題となる。

   ア この点、前述した共同正犯の一部実行全部責任の原則の根拠から、後行者が、先行者の行為及び結果を自己の犯罪のために利用する意思の下、先行者に加担し、現に自己の犯罪を実現したときには、承継的共同正犯が成立すると考える。

   イ これを本件について見ると、乙が甲の第一行為を自己の犯罪のために利用したという事情は特に見受けられない。

     したがって、承継的共同正犯は成立しない。

  (4) もっとも、同時傷害の特例(207条)の適用により、第一行為について乙に帰責できないか。

    まず、同条は意思連絡のない者の間における暴行について、どちらの暴行により結果が発生したのかがわからない場合に両者に結果を帰責させるための規定であるところ、意思連絡がある場合を殊更に排除する規定ではないため、意思連絡がある共同正犯にも適用はあると考える。

    そして、判例は同条が政策的規定であることを理由に、傷害致死罪についても同条の適用はあるとしている。

    しかし、同条はあくまでも「傷害した場合」と規定しており、傷害致死罪についても同条の適用を認めることは罪刑法定主義の観点から認められないと考える。

    したがって、傷害致死罪については、同条の適用はないため、本件でも同条の適用はない。

 2 よって、乙の上記行為に傷害致死罪の共同正犯は成立せず、傷害罪の共同正犯にとどまる。

   かかる罪責を乙は負う。

 3 なお、甲および乙は救急車を呼んでいるため中止犯(43条ただし書)の成否が問題となるが、同条は未遂における規定であり、Vが死亡し既遂に達している本件では成立しない。

 

第2問

1 まず、甲が殺意をもってXを絞殺した行為に殺人罪(199条)が成立する。

2 次に、甲が借用書を処分するためにマンションの共用部に立ち入った行為は、かかる意思を有する者が共用部に立ち入ることをマンションの管理人が知っていれば拒否したと考えられるため、管理権者の意思に反する立入り、すなわち「侵入」に当たる。

したがって、かかる行為に住居侵入罪(130条前段)が成立する。

3 次に、甲がマッチで508号室に火を放った行為に非現住建造物放火罪(109条1項)が成立しないか。

 (1) まず、508号室に独居老人であるXしか住んでおらず、かつ上記行為時Xは既に甲に殺害されていたことから、508号室は「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物」に当たる。

 (2) また、火はマッチを離れ床や壁を独立して燃焼する状態に達していたことから、甲は508号室を「焼損」したといえる。

 (3) したがって、上記行為に非現住建造物放火罪が成立する。

4 次に、甲がダイニングテーブルから100万円を持ち去った行為に窃盗罪(235条)が成立しないか。

 (1) まず、100万円はXの所有物であるため「他人の物」に当たる。

 (2) 次に、「窃取」とは占有者の意思に反して財物の占有を自己又は第三者に移転する行為をいうところ、本件において100万円の占有者であるXは既に亡くなっている。そのため、本件100万円は他人の占有する財物に当たらず、上記行為は「窃取」とならないのではないか。いわゆる死者の占有が問題となる。

   この点、占有とは財物に対する事実上の支配をいい、その有無は占有の意思及び占有の事実の観点から判断する解されるところ、死者には占有の意思も占有の事実も存しないため、死者の占有は認められない。

   もっとも、死者を殺害した犯人との関係では、殺害との時間的場所的近接性が認められる限り、死者の生前の占有は規範的にみてなお刑法的保護に値すると考える。

   これを本件について見ると、甲はXを殺害した者であり、甲はXを殺害してすぐ、殺害場所である公園付近のXが居住していた508号室で100万円を持ち去っている。

   したがって、100万円に対するXの占有はなお刑法的保護に値するので、上記行為は「窃取」に当たる。

 (3) また、甲は生活の足しにするために100万円を持ち去っているため、窃盗の故意も不法領得の意思も認められる。

 (4) したがって、上記行為に窃盗罪が成立する。

5 以上より、上記各行為に①殺人罪、②住居侵入罪、③非現住建造物放火罪、④窃盗罪が成立する。そして、②と③、②と④は目的・手段の関係にあるためそれぞれ牽連犯(54条1項後段)となり、③、④は②をかすがいとして科刑上一罪(54条1項後段)となる。これと①は別個の行為によるため、併合罪(45条前段)となる。

かかる罪責を甲は負う。

6 なお、本件における放火行為について、508号室自体を媒介物として、マンション全体を焼損せしめようとしたとして現住建造物放火罪の成立を構成できなくもないが、これは認められないと考える。

  本件マンションは優れた耐火構造及び他の区画に延焼しにくい作りになっていたため延焼可能性はなく、加えて甲には現住建造物放火の故意が認められないと思われるからである。

  また、有毒ガスが発生したとの事情については、甲がこの有毒ガスによりマンション住人の身体を害する意図を有していた場合には傷害罪(204条)が成立し得るものの、本件ではそのような事情はなく、また現に身体を害された者はいないため重過失傷害罪(211後段)も成立しないため、本件では上記甲の罪責に何ら影響は与えないと考える。

 

 

H27年度京大ロー入試民訴法再現答案

※点数は 60/100 でした。

第1 問1

1 本件において、XとYの間で売買代金支払の訴え(本件訴え)が係属しているところ、YはXに対して、同一の売買契約に基づく売買代金債務不存在確認の訴え(以下、後訴)を同一裁判所に提起している。そこで、かかる後訴は二重起訴の禁止(142条)に抵触し、不適法ではないか。同条にいう「事件」の判断基準について、明文がないことから検討する。

  (1) この点について、同条の趣旨は同一の訴えが提起されることによって生じる被告の応訴の煩や訴訟不経済、矛盾判決といった弊害を防止することにある。

   そこで、「事件」の判断基準については、①当事者及び②審判対象の同一性から判断すると考える。

  (2) これを本件について検討する。

    まず、本件訴えの原告はX、被告はYであるところ、後訴の原告はY、被告はXである。

    これは、原告と被告が入れ替わっただけで当事者がX,Yであることに変わりはないから、両訴において当事者は同一である(①)。

    次に、本件訴えの訴訟物は売買契約に基づく売買代金支払請求権であるのに対し、後訴の訴訟物は売買代金支払債務であるから、一見すると審判対象は異なるようにも思える。

    しかし、債務不存在確認の訴えは給付の訴えの反対形相であるため、訴訟物は両訴ともに売買代金支払請求権である。

    したがって、審判対象の同一性も満たす(②充足)。

2 よって、①・②を満たすため、後訴は二重起訴の禁止に抵触し、不適法である。

第2 問2

1 本件におけるYの陳述は、XのYに対する売買代金支払の請求を拒むものである。そこで、かかるYの陳述が否認か抗弁のいずれに当たるかについて検討する。

  (1) そもそも、否認とは相手方の主張する事実と一致しない、相手方が証明責任を負う事実を否定する陳述であり、抗弁とは相手方の主張する事実と一致する、自己の証明責任を負う事実を主張する陳述である。両者は、自身もしくは相手方のいずれが証明責任を負うかという点で異なる。

    そして、証明責任の分配については、分配基準として明確であることを理由に、各当事者は実体法の要件を基準として、自己に有利な法律効果を発生させる要件について証明責任を負うと解される。

  (2) これを本件についてみると、Yの陳述はXのYに対する500万円の売買代金債権の存在を認めた上で、Xが甲の引渡しをするまで支払いをしないということを内容とする。

    そして、Xが甲の引渡義務を負っていることは、引渡しを受けるYに有利な法律効果であるため、この点についての証明責任はYが負う。

    したがって、Yの陳述は抗弁としての意義を有する。

2 そして、Yの抗弁は同時履行の抗弁(民法533条)であるところ、かかる抗弁は権利抗弁であると解されるので、裁判所はYに権利行使の意思表示がない限り、これを判決の基礎とすることができない。

第3 問3

 1 本件第2回口頭弁論期日Yの主張は、Xと売買契約を締結したのはYではなくZであるというものである。ここで、売買契約の相手方がYであるという事実はYに売買契約の効果を及ぼす点でXに有利な法律効果をもたらすものであるため、この点についてはXが証明責任を負う。

   したがって、Yの主張は積極否認という意義を有する。

 2 もっとも、Yは第1回口頭弁論期日においてXと本件売買契約を締結したことを認める旨の主張を行っており、この主張と第2回口頭弁論期日における主張は矛盾する。

   そのため、第1回口頭弁論期日における主張との関係で、第2回口頭弁論期日における主張は自白の撤回とならないか。

  (1) まず、第1回口頭弁論期日の主張について、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実についての地陳述たる自白(179条)が成立するかについて検討する。

   ア まず、自白の成立する事実の範囲について検討する。

この点、訴訟物たる権利義務関係の存否を直接左右する主要事実については、紛争解決のため自白の拘束力を及ぼすべきである。

     他方で、証拠と同様の働きをする間接事実や、補助事実についても自白が成立すると解すると、裁判所の自由心証主義(247条)を事実上制限することになり妥当ではない。

     したがって、自白は主要事実についてのみ成立し、間接事実や補助事実については成立しないと考える。

   イ 次に、自己に不利益な事実とは何かが問題となるも、基準として明確性であるとの理由から、相手方が証明責任を負う事実をいうと考える。

   ウ これを本件について見ると、売買契約締結の事実は売買代金支払請求権の存否を直接左右するものであるから主要事実に当たる。そして、かかる事実は売買代金の支払いを求めるXに有 利な法律効果をもたらすものであるため、Xが証明責任を負う。

     したがって、Yの第1回口頭弁論期日における主張は、自白に当たる。

  (2) そうだとすれば、Yの第2回口頭弁論における主張はかかる自白の内容を否定するものであるため自白の撤回に当たるところ、かかる自白の撤回は認められるか。

   ア この点について、自白により生じる不要証効、審判排除効を前提に訴訟追行した相手方の信頼を保護するため、原則として自白の撤回をすることは認められない。

     ただし、自白の撤回を禁止する目的が相手方の信頼保護にあることから、①相手方の同意がある場合や、②刑事上罰すべき他人の行為により自白行った場合には、例外的に自白の撤回をすることは認められると考える。また、①自白の内容が真実に反し、かつ錯誤に基づいてこれを行った場合にも認められると考える。

   イ しかし、本件ではYに①~③のような事情は見当たらない

     したがって、自白の撤回は認められないから、Yの第2回口頭弁論期日における主張は主張自体失当である。

以上

H27年度京大ロー入試商法再現答案

※第1問で問題文読み間違えていて、最後の方で気付いて焦った記憶しかない答案です。

 点数は 55/100 でした。

第1問

第1 (1)について

1 本件において、P社監査役は取締役Cに対して会社法(以下法名省略)423条に基づく損害賠償請求を行うことが考えられる。

  本件では、P社取締役Bが会社資本5億円をギャンブルに費やしており、P社に損害が生じている。

  そして、CはP社取締役として他の取締役を監視する義務を負うところ(362条1項2号)、CはBの費消行為を見逃しており、かかる義務を懈怠しているように思える。

  もっとも、Bの費消行為については取締役会に上程されていないところ、Cは非上程事項についてまで監視義務を負うのか。

(1) この点、366条1項が各取締役に対して取締役会招集権限を与えたのは、上程された事項以外についても他の取締役が問題行為を行っていた場合には、自ら招集をさせ取締役会に上程させるためであると考えられる。

そうだとすれば、取締役会に上程されていない事項についても、各取締役は監視義務を負うというべきである。

(2) したがって、本件でもCはBの費消行為について監視義務を負っているため、かかる義務について任務懈怠がある。

2 よって、Cは任務懈怠責任を負うため、P社監査役の上記請求は認められる。

第2 (2)について

 1 設問前段

   本件において、FはAに対して429条1項に基づく損害賠償請求を行うことが考えられる。

  (1) この点について、同項の責任は、経済社会における株式会社の地位及び会社に占める取締役の職務の重要性にかんがみ、第三者保護のために取締役に課された法的責任であると考える。

    そこで、「悪意又は重過失」は任務懈怠について存すれば足り、「損害」は広く直接損害・間接損害の双方が含まれると考える。

  (2) これを本件について検討する。

    まず、Aはリスクの大きい事業に乗り出し、これに失敗して支払不能状態に陥っているところ、通常リスクの高い事業を行うに際しては事前に市場動向等をリサーチして行う必要がある。しかし、Aがかかるリサーチを行ったという事情はないから、少なくとも重過失による著しく不合理な業務執行を行ったといえ、善管注意義務(330条、民法644条)違反が認められる。

    したがって、かかる任務懈怠について重過失が認められる。

    また、かかる任務懈怠によりFは債権回収ができなくなるという間接「損害」を被っている。

    なお、FはP社債権者であるため「第三者」に含まれることに問題はない。

  (3) また、本件ではAの退任登記がなされていないところ、かかる不実の登記について、故意又は過失があれば、かかる不実の登記を善意の第三者に対抗することができない(908条2項)。

   ア ここで、退任登記は業務執行に関わる事項であり、退任する取締役自身がこれを行うことはできないため、「登記をした者」に当たらないから同項を直接適用することができない。

     しかし、同項の趣旨は、虚偽の外観を作出した者に外観通りの責任を負わせることにあるところ、退任取締役が取締役の登記を残存させることに明示的に承認していた場合には、同項を類推適用し、退任取締役にも429条1項の責任等を負わせることができると考える。

   イ 本件では、Aが登記を残存させることおにつき明示的な承諾を与えていたという事情は見当たらない。

     もっとも、Aが退任後も顧問としてP社に居座ったこと、顧問という名でありながらその実質は代表取締役であった時と同様、P社の運営に指示を与え、主要な地位を占め続けたことにかんがみれば、明示的な承諾を与えていた可能性が高いといえる。

     したがって、かかる場合には、FはAに対して上記請求を行うことができる。

 2 設問後段

   退任登記がされていた場合とされていなかった場合とで、FのAに対する賠償請求の可否に違いは生じないと考える。

   この点について、退任登記の趣旨は、取締役の責務の重要性にかんがみ、登記をした後には取締役が負う責任から解放することにある。

   もっとも、退任登記をしたことそれだけをもって責任の対象とならないとすれば、登記をすることによって容易に責任を回避することができることになり妥当ではない。

  また、429条1項の責任は、会社の経済社会における影響力の大きさ及び会社の行為が取締役の職務執行に依存していることから認められる。

  そうだとすれば、現実に取締役としての職務を行っている者については同項を類推適用できると解すべきである。

  したがって、Aが退任後も取締役の時と変わりなく職務を行っている本件では、なお429条1項の責任を負うため、前述の結論に至る。

 

 第2問

第1 (1)について

本件において、BはAに対して売買代金債権を行使しているところ、AがBの売買代金債権確保のために振り出した本件手形はCにより持ち出されてしまっている。

そのため、AがBの求めに応じて売買代金を支払った後に、Cその他本件手形の所持者から手形金の支払いを求められ、二重に支払いをしなければならないことになりかねない。

  そこで、AはBに対して手形に受戻証を記載して返還することを求め、これがなされるまで代金の支払いを拒むことができる(受戻抗弁、手形法(以下法名省略)77条1項3号、39条1項)。

第2 (2)について

1 本件において、AがEの請求に対して手形金を支払わなければならいかは、Aが手形債務を負っているかによる。

 (1) この点について、本件ではAがBに対して振り出した手形に対し、手形の裏書譲渡を行うにつき無権限であるCがDに対して裏書をし、かかる手形がEにさらに裏書譲渡されている。

   ここで、Cの無権限での裏書行為が偽造と無権代理行為のいずれに当たるかが問題となるも、転々流通する手形の性質から、両者の区別は手形上の記載によって決すべきであると解される。そして、本件手形には単に「B」と機関方式で裏書されているため、C裏書行為は偽造に当たる。

   したがって、被偽造者であるB及び振出人であるAは、追認(民法116条類推適用)をしない限り手形債務を負わないのが原則である。

 (2) もっとも、かかる原則を常に貫くと、Eの取引の安全が害されることになる。

  ア そもそも、偽造と無権代理はいずれも無権限者による本人名義の手形である点において差異はなく、第三者の信頼を保護する必要性は同じである。

そこで、民法表見代理規定の類推適用を認め、第三者において他人に権限があることを信じたことにつき正当な理由のある場合、被偽造者及び振出人は表見代理規定の類推適用により手形上の責任を負うと解する。

    また判例民法が手形の第三取得者のような者を表見規定によって保護される者として予定していないこと等を理由に、「第三者」には偽造の直接の相手方に限られ、転得者は含まれないと考えている。

しかし、手形は転々流通することから、手形の第三取得者についても表見代理による保護の必要性があるため、手形の転得者も「第三者」に含まれると考える。

  イ これを本件についてみると、本件ではDが偽造につき悪意であったという事情はあるものの、Eが悪意であったという事情は特にない。

    したがって、表見代理規定(民法110条)の類推適用により、被偽造者たるB及びAは手形上の責任を負う。

2 そこで、Aは手形振出しの原因であるAB間の売買契約が解除されたことを主張し、手形金の支払いを拒むことが考えられる。

 (1) この点について、手形の無因性(75条2号)から、原因関係が消滅しても、それは人的抗弁(77条1項1号、17条本文)にとどまり、手形債務は存続するのが原則である。

 (2) もっとも、AはEが「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ」(77条1項1号、17条但し書)手形を得たとして、人的抗弁を対抗して支払いを拒むことができないか。同文言の意義が問題となる。

  ア この点について、17条本文の趣旨は、手形の流通促進の見地から手形所持人を保護するという政策目的のため、債権譲渡における抗弁承継の一般原則(民法468条2項)を修正し、抗弁を切断する点にある。

    そこで、同文言は、所持人が政策的保護に値しない主観的事情を有していることをいい、具体的には、所持人が手形を取得するにあたり、手形の満期において、手形債務者が初人の直接の前者に対し、抗弁を主張して手形の支払を拒むことが確実であるという認識をもっていた場合をいうと考える。

  イ これを本件についてみると、Eが上記のような主観を有していたとの事情はない。

    したがって、AはEに対して人的抗弁を対抗することができない。

3 よって、AはEの請求を拒むことができず、手形金を支払わなければならない。

 

H27年度京大ロー入試民法再現答案

※点数は60/100でした。

第1問

第1 問1

 1 設問前段

   本件において、CはBに対して、BのAに対する貸金債権が時効消滅したことから、これにより1番抵当権が付従性により消滅したとして、抹消登記手続請求を行うことが考えられる。

  (1) この点、消滅時効は権利を行使できるときから(166条1項)、10年が経過することにより生じる(167条1項)ところ、本件ではBのAに対する貸付債権の弁済期である2005年9月1日から 10年以上経過している。

    そのため、本件貸付債権の消滅時効は生じている。

  (2) もっとも、消滅時効を援用できるは「当事者」のみであるところ(145条)、Aの物上保証人であるBは「当事者」に当たるか。当事者の意義について明文がないことから検討する。

   ア この点、時効制度の趣旨は、永続した事実状態の尊重のみならず、時効発生を望む当事者の意思を尊重することにある。

     そうだとすれば、「当事者」は真に時効発生を望む者に限定されるべきである。

     そこで、「当事者」とは直接的に時効発生の利益を受ける者をいうと考える。

   イ この点、物上保証人は時効発生により自己の財産が競売の対象にならなくなるので、時効発生により直接的に利益を受ける者であるといえる。

     したがって、物上保証人は「当事者」に含まれる。

  (3) よって、Cも「当事者」に当たるので、BのAに対する貸金債権は時効消滅し、これにより1番抵当権も付従性消滅するので、上記請求を行うことができる。

 2 設問後段

   本件においてもCはBに対して設問前段と同様の請求を行うと考えられるところ、本件では設問前段とは異なり、Aは2009年9月1日に「借金は必ず返すから返済を猶予してほしい」旨の念書をBに渡している。

   そのため、消滅時効が中断(147条)し、BのAに対する貸金債権は消滅していないことから、1番抵当権も付従性により消滅せず、Cの請求は認められないのではないか。

  (1) まず、Aが本件念書をBに渡したことは、本件貸金債権の存在を認めることであるので、時効消滅事由たる「承認」(147条3号)に当たる。

  (2) では、かかる時効中断の効果がCに及ぶか。物上保証人Cが時効中断の効果の及ぶ「当事者」(148条)に当たるかについて検討する。

    この点について、物上保証人は消滅時効を援用できる地位にあるにもかかわらず、時効中断の効果が及ばないとすれば、一方的に物上保証人を保護することになり妥当ではない。

    また、物上保証人は消滅時効が到来するまで債務者の債務を保証することを通常覚悟していると考えられる。

    したがって、物上保証人は時効中断の効果が及ぶ「当事者」に含まれると考える。

  (3) よって、Cは「当事者」に当たり、時効中断の効果が及ぶため、Cは上記請求を行うことができない。

第2 問2

 1 β債権の債務者がAの場合

本件において、DはBに対し、BのAに対する貸金債権が時効消滅したと主張し、これにより1番抵当権も付従性により消滅したとして、抹消登記手続請求を行うことが考えられる。

かかる請求を行うためには、2番抵当権者たるDが消滅時効を主張できる「当事者」(145条)に当たる必要がある。

この点、2番抵当権者は通常、1番抵当権の消滅により競売の際の配当額が増加するという反射的な利益しか有していない。

したがって、2番抵当権者は時効により直接的な利益を受ける「当事者」には当たらない。

よって、Dは「当事者」に当たらないから、上記請求を行うことはできない。

 2 β債権の債務者がEの場合

  (1) 本件において、DはBに対してβ債権の債務者がAの場合と同様の請求を行うことが考えられるところ、前述のようにDは「当事者」ではないためかかる請求を行うことはできない。

  (2) そこで、Dはβ債権を被保全債権として、Aの時効援用権を代位(423条)し、BのAに対する貸付債権の時効消滅を主張することが考えられる。

   ア まず、債権者代位権の援用の可否が問題となるも、債権者代位権について「すべての債権者のために」(425条)という文言がないことから、可能であると考える。

   イ また、あくまでも債権者代位権の転用の場面であることから、債務者の資力の有無は問題にならない。

   ウ したがって、DはAの時効援用権を代位し、貸付債権の時効消滅を主張できる。

 

第2問

第1 問1

 1 まず、Xは賃借権(601条)に基づく妨害排除請求として、Zに柵の撤去を求めることが考え有られる。

   この点、債権たる賃借権に基づいて賃貸人以外の第三者に物権的請求ができるか問題となるも、賃借権登記のなされた賃借権は地上権の同様の機能を有するため、登記がなされていれば可能であると考える。

   したがって、乙地について賃借権登記がなされていれば、XはZに上記請求を行うことができる。

 2 次に、Xは乙地の使用収益権を被保全債権として、Yの乙地所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使(423条1項)し、Yに柵の撤去を求めることが考えられる。

  (1) まず、かかる債権者代位権の転用が認められるか問題となるも、債権者代位権には「全ての債権者のため」(425条)のような文言がないため、可能であると考える。

  (2) また、あくまでも債権者代位権の転用の場面であるため、債務者の資力の有無は問題とならないと考える。

  (3) したがって、XはYに上記請求を行うことができる。

3 また、XはXY間の賃貸借契約に基づいて乙土地を占有しているため、Yに対して占有保持の訴え(198条)により柵の撤去を請求することができる。

第2 問2

 1 まず、XY間の賃貸借契約においては、1m2単価1000円として月額330万円の賃料をXが支払う合意がされているところ、乙地は3300m2ではなく3200m2であったため、Xが支払うべき賃料は月額320万円に減少する。

   そのため、XはYに対して賃料の減額請求(563条1項、559条、601条)を行うことが考えられ、かかる請求は認められる。

 2 次に、3200m2では賃借の目的である病院の開設ができないとXが考えた場合には、XはXY間の賃貸借契約を解除(563条2項、559条、601条)することができる。

 3 さらに、XはYに対して病院を開設できないことによって生じた損害の賠償請求(563条3項、559条、601条)を行うことが考えられる。

  (1) この点、損害の範囲については416条が規定しているところ、同条の趣旨である損害の公平な分担の理念にかんがみ、同条1項は損害との相当因果関係について規定し、同条2項はその基礎となる事情について規定したものであると考える。

  (2) このことを元に本件においてXに生じた損害について検討する。

    まず、病院の設計変更に伴う600万円の費用については、賃借する土地の減少によって当然生じる通常損害であるといえる。

    また、病院開業の延期による1200万円の減収についても、賃借する土地の減少により病院が開設できない結果当然生じる通常損害である。

  (3) したがって、XはYに対して1800万円の損害賠償請求を行うことができる。

                                           以上

H27年度京大ロー入試行政法再現答案

※この頃の自分は判例知りませんでした(問1)(こいついつも判例知らずに爆死してんな)
点数は 28/50 でした。

 

第1 問1

 従来の判例は、理由提示の程度として、処分の原因となる事実及び処分の根拠条文を提示すれば足りるとしていた。

 これに対し、本判決は、従来の判例法理を維持しつつも、処分基準が行政機関において定められている場合には、上記事項に加え、いかなる処分基準の適用により処分が行われたのかも提示しなければならないと判示した。

第2 問2

 1 まず、設問を解く前提として処分基準の法的性質について検討するに、処分基準は処分を行うに際して行政内部の意思決定の基準となり、国民の権利義務について何ら制限を加えるものではないから、処分基準は行政規則である。

 2 そのため、行政庁が処分基準にのっとらずに裁量権を行使したとしても、それだけをもって直ちに裁量権の行使が違法となることはない。

 3 では、行政庁が処分基準にのっとって裁量権を行使した場合はどうか。

   まず、処分基準それ自体が違法であった場合には、処分基準にのっとって行われた裁量権の行使も違法となる。

   また、処分基準それ自体に違法性はなくとも、処分基準にのっとって行われた裁量権の行使について裁量権の逸脱・濫用が認められた場合には、かかる裁量権の行使は違法となる。

第3 問3

1 判例は、行政処分について手続的違法がある場合には、原則として当該行政処分は取り消されるべきであるとしつつも、軽微な違法に過ぎない場合には、取り消されるべきではないとしている。

2 私見としては、かかる判例法理に賛成である。行政処分は国民の権利義務に変動を来すものであるため、処分を受ける者の適正な手続を受ける権利は保護されるべきである。そうだとすれば、たとえ結論が妥当であったとしても、処分を受ける者のかかる権利を保護すべく、当該処分は取り消されるべきである。

  もっとも、手続的違法にも軽重様々なものがあるところ、軽微な手続的違法があるにすぎない場合にまで処分が取り消されるべきであると考えると、行政の円滑な運営を著しく害することになりかねず、妥当ではない。

  そのため軽微な手続的違法があるにすぎない場合には、処分は取り消されるべきではない。

  よって、上記の結論に至った。

以上