底辺ロー卒生のブログ(答案の墓場)

H30から司法試験を受けている底辺ロー卒生が書いた答案UPしたりして、閲覧している皆様にご批評して頂くためのブログ

H27年度京大ロー入試憲法再現答案

※ロースクール入試の再現答案はあんまり出回ってなさそうなので、これから京大ロー受ける方は叩き台にでもしてください。中々の論パ貼り付け答案に仕上がっています。
ちなみにこの答案の点数は、63/100 でした。

第1問

1 本件において、Aは①売春勧誘罪(売春防止法(以下、売防法)はAの営業の自由を侵害し違憲である、②女子のみを対象とする補導処分制度は法の下の平等に反し違憲である、③売春勧誘罪は性交の自由を侵害し違憲である、との主張を控訴審で行うと考えられる。そこで、この点について検討する。

2 ①について

 (1) まず、Aは金銭を稼ぐために路上で勧誘を行っていたと考えられることから、かかる行為は営業の自由としての性質を有している。

   そして、憲法(以下法名省略)22条1項は職業選択の自由を選択しているところ、職業の選択を保障するのみでその遂行の自由を保障しなければ職業選択の自由の意味が失われるので、同項は職業選択の自由のみならず営業の自由も保障していると考える。

 (2) 次に、売春勧誘罪は罰則により勧誘を禁止しているので、営業の自由に対する制約も認められる。

 (3) もっとも、営業の自由も絶対無制約ではなく、公共の福祉(22条1項)による一定の制約を受ける。では、本件制約は公共の福祉として正当化されるか。

  ア この点、職業とは生計を維持する手段であるのみならず、自己の個性を全うする場として人格的利益と不可分の関係にあるため、営業の自由は重要である。

    また、本件制約は罰則をもって勧誘行為を禁止するため、規制態様も強度である。

    そして、本件制約は社会における善良な風俗の保護(売防法1条参照)という消極目的のためになされるため、社会的経済的政策といった積極目的の場合と比べて裁判所の審査能力は不十分とはいえない。

    そこで、審査基準は厳格に、①目的が重要で、②目的と手段との間に実質的関連性が認められる場合に限り、制約は正当化されると考える。

  イ これを本件について見ると、まず本件制約は社会における善良な風俗の保護にあるところ、国家は国内の治安・風俗を維持する義務を負っているため(福祉主義、25条以下)、かかる目的は重要といえる(①充足)。

    次に、本件制約は路上における勧誘の禁止であるところ、これにより売春行為が行われる機会が減少するので、本件制約と目的の間には適合性が認められる。

    また、本件制約が禁止するのは、売春という貞操を商品として市場で取引する社会的に許されるべきではない行為の勧誘行為であり、他の行為については何ら禁止するものではないから、最小限度の制約といえる。したがって、本件制約と目的の間に必要性も認められる。

    よって、目的と手段の間に実質的関連性も認められる(②充足)。

(4) 以上より、本件制約は正当化されるので、Aの主張①は認められない。

3 ②について

 (1) まず、14条1項は法の下の平等について規定しているところ、法適用の平等のみを保障し法内容の平等を保障していないとすれば、平等を保障する意味が失われるので、「法の下」の平等とは法適用のみならず、法内容の平等を含むと考える。

   また、各人には事実的・実質的差異があるので、法の下の平等とは合理的根拠に基づかない差別を許さないものであると考える。

 (2) では、本件補導処分制度は合理的根拠を有さないものとして許されないか。

  ア この点、本件制度は「性別」という歴史的に見て不合理な差別事由であるとして憲法14条1項後段が列挙した事由に基づいて処分を行うものである。

    そのため、審査基準は厳格に、①目的が重要であり、②目的と手段の間に実質的関連性が認められる場合に限り、本件制度は合憲となると考える。

  イ これを本件について検討すると、まず、本件制度の目的は、売春を行った女子に適切な措置を施すことで売春の再発を防ぐとともに女子の社会復帰をなすことにあり、かかる目的は重要である(①充足)。

    次に、売春の多くは生活のための日銭を稼ぐために行われるため、かかる女子に生活指導や職業補導を施すことによって売春の再発を防ぐことができるから、本件制度と目的の間には適合性がある。

    また、男子と比して女子は身体的にか弱く、また売春行為によって心身に傷を負っていることが多いため、女子のみを特別に手厚く保護する必要がある。

    したがって、本件制度の目的の間に実質的関連性も認められる(②充足)。

(3) よって、本件制度には合理的根拠が認められるため、Aの主張②も認められない。

3 ③について

 (1) まず、性交の自由は憲法上列挙されていないが、憲法13条は人格的生存に不可欠な権利を憲法上保障したものと解されるので、性交の自由が人格的生存に不可欠な権利であるかを検討する。

   この点、性交は生殖行為であるとともに、男女の仲を深めるという意義を有している。

   もっとも、性交はそれなしでは生きていけないというほど重要な行為ではないので、人格的生存に不可欠とはいえない。

   したがって、性交の自由は13条により保障されない。

 (2) また、13条は憲法上保障されない権利の制約は必要性及び相当性が認められない限り許されないことを規定した客観法であるという見解がある。

   しかし、前述のように善良な風俗を保護する必要性はあり、また禁止される行為は「売春」の勧誘行為に限定されるから相当性も認められるので、やはり売春勧誘罪は13条に反しない。

 (3) よって、Aの主張③も認められない。

4 よって、Aの主張はすべて認められないので、裁判所は売春勧誘罪及び補導処分制度について合憲の判断を下すべきである。

 

第2問

1 本件規律は政党の自律性を侵害し違憲ではないか。

 (1) まず、憲法上政党について明文で定めたものはないため、前提として政党の性質について検討する。

   この点、我が国の議会制民主主義においては、政党は民意を媒介するものとして重要な役割を有している。

   また、議席を一番多く有する政党の党員は内閣の構成員として行政を行うので、政党は権力性を有している。

   そのため、政党は公的な側面を有しているといえる。

   他方で、政党は結社の自由(憲法(以下法名省略)21条1項)の下、自由に結成できる私的団体でもある。

   そこで、政党は公的側面と私的側面の両方を有する複合的な存在であると考える。

 (2) では、本件規律は政党の自律性を侵害するか。

  ア この点、政党の公的側面を重視すれば、あらゆる規制が許されるようにも思える。

    もっとも、前述のように政党は本来自由に作ることのできる団体であるところ、あらゆる規制を認めては政党内の団体自治を過度に制約することになり妥当ではない。

    そこで、政党への規制は、(1)規制の必要性があり、かつ(2)その方法に相当性がある場合にのみ認められると考える。そして、①・②を満たさない規制は、政党の自律性を侵害するものとして21条1項に反し違憲となると考える。

  イ これを本件について検討する。

    まず、本件規律は、政治資金の公明性を確保し、民主政治の健全な発展に寄与することにあるところ、民意の媒介機能を有する政党が、政治資金を提供した特定の企業ないし個人に便益を図るような活動をすることでかかる機能を果たさないおそれがあるため、政治資金についてある程度の規律を及ぼす必要性は認められる((1)充足)。

    また、本件規律は政党に①~③の事項について総理大臣に報告する義務を課しているところ、政治資金パーティーの対価と称して多額の政治献金がなされる可能性があることから、少なくとも③については支払いをした者の氏名、支払額および支払日時を求めたとしても不相当ではないと思われる。

    しかし、①について、党費を納入した者の名前を明かすことは、その者が党費を納入した党を支持していることを明るみにすることに他ならない。政党を支持することは、その者の思想観・価値観に基づいて行われるものであり、思想・良心の自由(19条)により保障されるものであるところ、①はまさにその者の内心を暴露させるものにほかならず、思想・良心の自由を侵害するものである。

    また、②についても、党へ寄附を行うことはその者の思想観・価値観に基づいて行われるものであるため、同じく思想・良心の自由により保障されるものであるところ、②はその者の内心を暴露させるものにほかならない。確かに、現代社会における企業の社会的・経済的影響力の大きさにかんがみれば、企業・法人レベルについては寄附の内容等を公表することを義務付けても相当性が認められる余地はあり得る。しかし、②は企業・個人を問わず寄附をした者の氏名等の報告を義務付けるものであるため、少なくとも個人レベルではやはり思想・良心の自由を侵害するといえる。

    そして、①・②があることによって、党費や寄附金を支払う者が侵害を回避するために党費・寄附金の支払いをためらう結果、政党な活動に際して十分な資金を得られなくなり、活動に支障をきたすことになりかねない。

    したがって、①・②については相当性が認められない((2)不充足)。

2 よって、本件規律は政党の自律性を侵害し、違憲である。