底辺ロー卒生のブログ(答案の墓場)

H30から司法試験を受けている底辺ロー卒生が書いた答案UPしたりして、閲覧している皆様にご批評して頂くためのブログ

H29予備試験民法再現答案

※司法試験だけじゃなくて他の答案上げたりしてみたら?というアドバイスを頂いたので、予備の再現答案でもUPしてみようかと思います。ちなみに予備の再現答案は民法だけ書いてました(他の科目はもう再現も無理かな……(忘却の彼方))。
 評価はAです。ロースクールでイジメられ…鍛えられたおかげですね。こんなんでもA来るんだと感じて頂けたら幸いです。

第1 設問1

1 CはAに対して甲建物所有権(民法(以下法名省略)206条)に基づく本件登記の抹消登記手続請求を行っているところ、かかる請求が認められるためには、①Cが甲建物を所有していること、②甲建物にA名義の登記があることを満たす必要がある。本件では②は問題なく認められる。①については、BC間の売買契約(555条)により甲建物所有権をCが取得したことを主張する。

2 Aの反論等

 (1) Aは甲建物の所有権はAにあるため、BC間の甲建物売買契約は他人物売買(560条)であり所有権はCに移転していないと反論することが考えられる。本件ではBC間売買以前にAB間で甲建物の売買が行われているため、この時点で所有権はAに移転する(176条)ため、Aの反論は認められそうである。

 (2) これに対して、Cは、AB間の売買契約は不動産譲渡担保によるものであるため、所有権はAに移転しておらず、被担保債権をCが弁済供託したことで担保権すら消失したと主張する。

   譲渡担保の法的性質については争いがあるが、実質は債権の担保にあるため、譲渡担保設定により譲渡担保権者は一種の担保権を取得し、所有権はなお設定者に属すると考える。

   もっとも、本件では被担保債権であるAのBに対する貸金債権は架空のものであり、また、Aは書面の意味がわからないまま契約書に署名・押印していることから、AB間で譲渡担保契約はそもそも成立していない。そのため、Cの再反論は奏功しそうにない。

 (3) そこで、Cは、94条2項類推適用により、AはAB間の売買契約が譲渡担保契約であることをCに対抗できない結果、CはBC間の売買契約により甲建物の所有権を取得し、弁済供託によりAは担保権すら喪失すると主張する。

  ア 94条2項の趣旨は、虚偽の外観作出につき真の権利者に帰責性のある場合に、真の権利者の犠牲の下、虚偽の外観を信頼した第三者の取引安全を保護することにある。そこで、①虚偽の外観の存在、②①につき真の権利者の帰責性、③①につき第三者が信頼したことを満たせば、同項を類推適用できると考える。

  イ まず、甲建物につき譲渡担保を登記原因とする本件登記がされており、また、譲渡担保契約書にはAの署名・押印がなされていたことから、譲渡担保契約の成立という虚偽の外観が認められる(①充足)。また、署名・押印行為はAの意思によることから、Aの帰責性も認められる(②充足)。

    では、③は認められるか。本件のように真の権利者が虚偽の外観作出につき積極的に関与した場合には、110条を類推適用し、第三者が虚偽の外観につき善意無過失であったことを要すると考える。本件でCはAB間の譲渡担保契約が虚偽であることを知らなかったが、知らなかったことにつき過失はあった(設例指示)。したがって、③は認められない。

  ウ よって、Cの上記主張は認められない。

3 以上から、甲建物の所有権はなおAにあるため、Cの上記請求は認められない。

 

第2 設問2

1 CE間の法律関係

  本件では、CD間でCを貸主、Dを借主とする甲建物賃貸借契約(601条)が成立し、DE間で甲建物の転貸借契約(612条1項)が成立しているところ、CD間の賃貸借契約は合意により解除されている。DE間の転貸借契約はCD間の賃貸借契約を前提とするものであり、CE間では何らの契約関係もないことからすれば、CはEに対して建物の明渡しを請求できるようにも思える。

  しかし、このような請求が認められるとするのは、原賃貸借継続中は目的物の使用収益ができるという転借人の合理的期待を一方的に裏切るものであり、妥当ではない。また、原賃貸人としても、転貸借について同意をしている以上は、転貸借契約終了までは、転借人が目的物を使用収益することを当然覚悟していたというべきである。

  そこで、原賃貸借契約が合意解除された場合には、原賃貸人は転貸人たる地位をそのまま受け継ぎ、原賃貸人と転借人との間で賃貸借契約が成立すると考える。

2 CのEに対する請求

  CはEに対して甲建物を明け渡すか、賃料を25万円に増額することを請求している。しかし、前述のようにCは転貸人たる地位をそのまま受け継ぐから、かかる請求を行うことはできない。

3 EのCに対する請求

  EはCに対して、建物修繕費用の償還請求(608条1項)を行っている。確かに、賃貸人は賃借人に対して修繕義務を負い(606条1項)、賃借人が修繕費用を支出したときは、これを償還しなければならない。

  しかし、本件でEが修繕費を支出したのは、未だDE間で転貸借契約が成立していた段階であり、この段階ではCはEに対して何らの義務も負っていなかった。また、甲建物の修繕につきCはDに修繕義務を負うはずだが、この義務はCD間の特約により排除されていた。転貸人たる地位の承継については、転借人保護の観点からは将来効で十分であり、既に発生した債権債務についてまで引き継がれるわけではないというべきである。

そのため、本件修繕費の支出については、償還義務を負うのはDであり、Cではない。

したがって、Eの上記請求は認められない。