底辺ロー卒生のブログ(答案の墓場)

H30から司法試験を受けている底辺ロー卒生が書いた答案UPしたりして、閲覧している皆様にご批評して頂くためのブログ

H29予備試験民法再現答案

※司法試験だけじゃなくて他の答案上げたりしてみたら?というアドバイスを頂いたので、予備の再現答案でもUPしてみようかと思います。ちなみに予備の再現答案は民法だけ書いてました(他の科目はもう再現も無理かな……(忘却の彼方))。
 評価はAです。ロースクールでイジメられ…鍛えられたおかげですね。こんなんでもA来るんだと感じて頂けたら幸いです。

第1 設問1

1 CはAに対して甲建物所有権(民法(以下法名省略)206条)に基づく本件登記の抹消登記手続請求を行っているところ、かかる請求が認められるためには、①Cが甲建物を所有していること、②甲建物にA名義の登記があることを満たす必要がある。本件では②は問題なく認められる。①については、BC間の売買契約(555条)により甲建物所有権をCが取得したことを主張する。

2 Aの反論等

 (1) Aは甲建物の所有権はAにあるため、BC間の甲建物売買契約は他人物売買(560条)であり所有権はCに移転していないと反論することが考えられる。本件ではBC間売買以前にAB間で甲建物の売買が行われているため、この時点で所有権はAに移転する(176条)ため、Aの反論は認められそうである。

 (2) これに対して、Cは、AB間の売買契約は不動産譲渡担保によるものであるため、所有権はAに移転しておらず、被担保債権をCが弁済供託したことで担保権すら消失したと主張する。

   譲渡担保の法的性質については争いがあるが、実質は債権の担保にあるため、譲渡担保設定により譲渡担保権者は一種の担保権を取得し、所有権はなお設定者に属すると考える。

   もっとも、本件では被担保債権であるAのBに対する貸金債権は架空のものであり、また、Aは書面の意味がわからないまま契約書に署名・押印していることから、AB間で譲渡担保契約はそもそも成立していない。そのため、Cの再反論は奏功しそうにない。

 (3) そこで、Cは、94条2項類推適用により、AはAB間の売買契約が譲渡担保契約であることをCに対抗できない結果、CはBC間の売買契約により甲建物の所有権を取得し、弁済供託によりAは担保権すら喪失すると主張する。

  ア 94条2項の趣旨は、虚偽の外観作出につき真の権利者に帰責性のある場合に、真の権利者の犠牲の下、虚偽の外観を信頼した第三者の取引安全を保護することにある。そこで、①虚偽の外観の存在、②①につき真の権利者の帰責性、③①につき第三者が信頼したことを満たせば、同項を類推適用できると考える。

  イ まず、甲建物につき譲渡担保を登記原因とする本件登記がされており、また、譲渡担保契約書にはAの署名・押印がなされていたことから、譲渡担保契約の成立という虚偽の外観が認められる(①充足)。また、署名・押印行為はAの意思によることから、Aの帰責性も認められる(②充足)。

    では、③は認められるか。本件のように真の権利者が虚偽の外観作出につき積極的に関与した場合には、110条を類推適用し、第三者が虚偽の外観につき善意無過失であったことを要すると考える。本件でCはAB間の譲渡担保契約が虚偽であることを知らなかったが、知らなかったことにつき過失はあった(設例指示)。したがって、③は認められない。

  ウ よって、Cの上記主張は認められない。

3 以上から、甲建物の所有権はなおAにあるため、Cの上記請求は認められない。

 

第2 設問2

1 CE間の法律関係

  本件では、CD間でCを貸主、Dを借主とする甲建物賃貸借契約(601条)が成立し、DE間で甲建物の転貸借契約(612条1項)が成立しているところ、CD間の賃貸借契約は合意により解除されている。DE間の転貸借契約はCD間の賃貸借契約を前提とするものであり、CE間では何らの契約関係もないことからすれば、CはEに対して建物の明渡しを請求できるようにも思える。

  しかし、このような請求が認められるとするのは、原賃貸借継続中は目的物の使用収益ができるという転借人の合理的期待を一方的に裏切るものであり、妥当ではない。また、原賃貸人としても、転貸借について同意をしている以上は、転貸借契約終了までは、転借人が目的物を使用収益することを当然覚悟していたというべきである。

  そこで、原賃貸借契約が合意解除された場合には、原賃貸人は転貸人たる地位をそのまま受け継ぎ、原賃貸人と転借人との間で賃貸借契約が成立すると考える。

2 CのEに対する請求

  CはEに対して甲建物を明け渡すか、賃料を25万円に増額することを請求している。しかし、前述のようにCは転貸人たる地位をそのまま受け継ぐから、かかる請求を行うことはできない。

3 EのCに対する請求

  EはCに対して、建物修繕費用の償還請求(608条1項)を行っている。確かに、賃貸人は賃借人に対して修繕義務を負い(606条1項)、賃借人が修繕費用を支出したときは、これを償還しなければならない。

  しかし、本件でEが修繕費を支出したのは、未だDE間で転貸借契約が成立していた段階であり、この段階ではCはEに対して何らの義務も負っていなかった。また、甲建物の修繕につきCはDに修繕義務を負うはずだが、この義務はCD間の特約により排除されていた。転貸人たる地位の承継については、転借人保護の観点からは将来効で十分であり、既に発生した債権債務についてまで引き継がれるわけではないというべきである。

そのため、本件修繕費の支出については、償還義務を負うのはDであり、Cではない。

したがって、Eの上記請求は認められない。

 

H30司法試験刑事訴訟法再現答案

※差がつかないオーソドックスな問題だったから逆に差をつけられてしまった好例

 

設問1

第1 下線部①の適法性

1 強制処分該当性(刑事訴訟法(以下法名省略)197条1項但書)

  下線部①は、公道上で、甲の顔を撮影するものであるが、これが強制処分(197条1項但書)に当たる場合、強制処分法定主義、ひいては令状主義(憲法35条)に反し違法となるため、この点について検討する。。

(1) 強制処分とは、相手方の明示又は黙示の意思に反して重要な権利・利益を実質的に侵害する処分をいう。重要な権利利益ついては、強制処分法定主義と令状主義という二重の制約による保護に値するものであることを要するというべきであるから、住居等の平穏(憲法35条)や身体の自由(憲法38条)のような利益やこれに準じたものかを見て判断する。

(2) 本件撮影は、甲の同意なく行われたものであり、また、甲が同意をするとは考えられないものであったから、甲の黙示の意思に反して行われたものといえる。また、撮影内容は事務所から出てくる甲の顔を撮影するというものであり、甲のプライバシー権(憲法13条)に対する一定程度の制約が認められる。

  もっとも、本件撮影は公道上で事務所から出てきた甲を撮影したものであり、顔などが見られることは甲も受忍していたといえるから、かかるプライバシーの要保護性は低い。そして、それ以上に甲の権利利益が制約されているという事情もない。

  そうすると、本件撮影は甲の重要な権利利益を制約するものとはいえない。したがって、本件撮影は強制処分に当たらない。

2 任意処分の限界

 (1) そうすると、本件撮影は任意処分(197条1項本文)として行われたということになる。もっとも、任意処分といえども無制約ではなく、捜査比例原則(197条1項本文)から、必要性、緊急性を加味しつつ、社会通念上相当な範囲でのみこれを行うことが許容されると考える。

 (2) 本件撮影は、詐欺の被害者であるVに、詐欺の犯人と思われる甲の顔を確認させるために行われており、必要性が認められる。確かに、面通しを行うのであれば、ビデオカメラによるのではなく、写真によって行うのでも十分足りるように思える。しかし、Vは2度にわたり犯人と接触していることから、静止画よりも動画の方がより判別が期待できるといえるから、ビデオカメラによる撮影であったとしても、相当な範囲を超えるものとはいえない。また、撮影は公道上から、20秒という短時間で行われたものであるから、相当な範囲を超えない。

   したがって、本件撮影は任意処分の限界を超えない。

3 よって、下線部①は適法である。

第2 下線部②の適法性

1 強制処分該当性

下線部②の強制処分該当性についても、前述の基準から判断する。

  下線部②の撮影も、甲の同意なく行われたものであり、甲の黙示の意思に反して行われたものである。また、本件撮影は、下線部①のものとは異なり、採光窓を通して甲の事務所内を撮影するものであるから、住居の平穏(憲法35条)を害するものといえ、重要な権利利益の制約も認められるとも思える。

  もっとも、本件撮影は本件事務所の向いのマンション2階通路から行われたものであるところ、通路から採光窓を通して本件事務所内は見通すことができ、甲としても通路から事務所内が見えることは受忍していたといえるから、かかる範囲で住居の平穏の要保護性は低いといえる。また、撮影態様も、ドローンを飛ばすなどの方法ではなく、通路側から見える範囲で撮影したにとどまる。

したがって、本件撮影も強制処分に当たらない。

2 任意処分の限界

  では、本件撮影は任意処分の限界を超えないか。

  本件撮影は、下線部①の撮影では犯人が甲であるとの確証を得ることができなかったことから、犯人が持参した工具箱と甲の所持する工具箱が同一であるかをVに確認するためになされていることから、必要性は認められる。また、撮影態様についても、わずか5秒、事務所内の工具箱を撮影したにとどまり、その他事務所内の物を写して甲のプライバシーを侵害しないよう、配慮がなされているから、相当な範囲を超えない。

  したがって、任意処分としての限界も超えない。

3 よって、下線部②も適法である。

設問2

第1 小問1

1 伝聞証拠該当性(320条1項)

本件メモは、公判期日外におけるVの証言を内容とするものであるから、これが伝聞証拠(320条1項)に当たる場合、原則として証拠能力が否定される。そこで、本件メモが伝聞証拠に当たるかにつき検討する。

 (1) 伝聞法則の趣旨は、供述証拠は知覚・記憶・叙述の過程を経て事実認定者に伝わるところ、各過程には勘違いや言い間違えなどの誤りが介在するおそれがあるため、反対尋問等によりその正確性を吟味する必要があるが、伝聞証拠は原供述者に対して反対尋問等をすることによってその正確性を吟味することが不可能であるから、誤判防止のため、あらかじめ証拠能力を排除することにある。

   そうすると、伝聞証拠とは、公判期日外の供述で、要証事実との関係からその内容の真実性が問題となるものをいうと考える。

 (2) 本件メモは、前述の通り公判期日外においてVが作成したものである。また、Qは立証趣旨を「甲が、平成30年1月10日、Vに対し、本件メモに記載された内容の文言を申し向けたこと」として本件メモを取調べ請求しているところ、甲は犯行を否認していることから、要証事実も立証趣旨と同様である。そうすると、本件メモの内容の真実性が問題となるため、本件メモは伝聞証拠に当たる。

   したがって、本件メモは伝聞証拠に当たるため、原則として証拠能力は認められない。

2 伝聞例外該当性(321条以下)

 (1) Vの供述部分

   では、伝聞例外により例外的に証拠能力が認められないか。本件メモの証拠調べについて、甲は不同意としていることから、326条1項によることはできない。そこで、321条1項3号により伝聞例外が認められないかについて検討する。

  ア 供述不能について、同号は原則として証拠能力が認められない伝聞証拠に例外的に証拠能力を認める規定であることから、一時的な供述不能では足りず、一定程度継続するものであることを要すると考える。

    本件では、Vは脳梗塞により意識が回復する見込みはなく、仮に回復したとしても、記憶障害により取調べは困難であるとの診断がなされており、「身体の故障」が一定程度継続するものと認められるので、供述不能事由は認められる。

  イ 次に、欺罔行為の立証に当たっては、欺罔行為を受けたVの供述の他は、決定的な証拠は現在のところ存しないことから、「犯罪事実の存否の証明に欠くことができない」ものといえる。

  ウ では、特信情況は認められるか。ここでの特信情況は、321条1項2号の特信情況とは異なり、供述がなされた状況のみからその有無の判断が行われる絶対的特信情況である。

    本件メモは、Vは詐欺の犯人がV宅を訪問したその日に作成されたものであり、また、翌日に警察署に提出して保管されていたものであるから、第三者により書換がなされる余地もなかった。また、Vに虚偽の内容を書く動機もなかった。

    したがって、絶対的特信情況も認められる。

  エ よって、本件メモのうち、V供述部分は、321条1項3号により証拠能力が認められる。

 (2) 「男」の供述部分

   本件メモには、Vが聞いた「男」の供述も含まれており、いわゆる再伝聞に当たるようにも思える。もっとも、「男」の供述部分については、発言それ自体から欺罔行為があったことを認定するものであり、発言内容の真実性は問題とならないから、非伝聞であるというべきである。これと、「男」が甲であることを他の証拠により立証できれば、甲が欺罔行為を行ったことを認定できる。

   なお、このような他の証拠により「男=甲」であるとの立証無しに、男が甲であることを前提とする場合には、甲が発言を行ったことが前提となっているため、実際に甲が発言を行ったか内容の真実性が問題となるため、再伝聞に当たる。この場合、324条を準用したとしても、伝聞例外の要件は満たさないと思われる。

第2 小問2

1 立証趣旨を「100万円を受け取ったこと」とする場合

 (1) 当事者主義の下、検察官の立証趣旨は尊重すべきであるから、まずはQの立証趣旨から本件領収書の証拠能力が認められるかについて検討する。

   本件領収書は、公判期日外において作成されたものである。また、甲は犯行を否認していることから、要証事実は立証趣旨と同様となる。そうすると、本件領収書は、要証事実との関係で、内容の真実性が問題となるため、伝聞証拠に当たり原則として証拠能力は認められない。

 (2) そこで、伝聞例外該当性について検討する。本件でも甲は証拠調べを不同意としているから、326条1項によることはできない。また、本件領収書は機械的・連続的に作成されたものではないから、業務文書(323条2号)にも特信文書(同条3号)にも当たらない。そして、321条1項3号該当性も認められない。

   したがって、伝聞例外も認められず、本件領収書の証拠能力は否定される。

2 立証趣旨を「領収書の存在及び内容」とする場合

では、立証趣旨を「領収書の存在及び内容」とする場合、本件領収書の証拠能力は認められるか。

  この場合、領収書の内容の真実性は問題とならないため、非伝聞であり、証拠能力が認められる。

  この立証手法は、本件領収書が存在するということと、本件領収書に甲の指紋及び印影が存在することから、100万円の交付の事実を推認するものである。すなわち領収書とは、現金を受ける側が、渡す側に対して、受け取った事実を証明する文書として交付するものであるところ、かかる領収書に甲の指紋と、甲の認印の印影と合致する印影が検出されたということは、甲がVから100万円を受け取ったことを契機に、Vに対して領収書を渡したということが経験則に照らして合理的に推認できるのである。

  したがって、上記立証趣旨による場合、本件領収書の証拠能力は認められる。

3 なお、立証趣旨を「事件時の甲の心理状態」とする場合も、本件領収書の証拠能力は認められる。この場合、内容の真実性が問題となるも、心理状態供述は当時の被告人の心理状態を知る最良の証拠であるから、政策的に非伝聞として扱われるためである。

 

                                    以上

H30司法試験刑法再現答案

※妄想の産物

第1 設問1

1 乙がPTA役員会で「2年生の数学を担当する教員がうちの子を殴った」と発言した行為に、信用毀損罪(233条)は成立しない。同罪の保護法益は経済社会における人の信用であるところ、上記行為はかかる法益の毀損に向けられたものではないためである。

2 では、上記行為に名誉毀損罪(230条1項)は成立するか。

 (1) 上記行為はPTA役員会において発せられたものであるところ、PTA役員会に出席していたのは、乙を除くとA高校校長、保護者3名の4人に過ぎなかった。そのため、「公然と」事実を摘示したものとはいえないとも思える。

   もっとも、特定少数者に対して行われたものであっても、その特定少数者を介して不特定多数者に伝播する可能性が認められる場合には、外部的名誉への侵害の危険性が認められるので、「公然」性が認められると考える。

   乙は、PTA役員会にて、教員が生徒に対して暴行を行ったことを内容とする発言を行っている。PTAは教員と保護者の相互連絡の機会を持つ場であるところ、このような発言が仮に真実であるなら、教員と保護者の間の信頼関係は崩れるため、A高校校長としてもPTA役員の保護者としても、事実関係を明らかにするために周囲の教員や生徒に対して調査を行うことが考えられる。そうすると、上記行為により、A高校校長、PTA役員の保護者を介して不特定多数者に伝播する可能性が認められるから、「公然」性が認められる。

 (2) 乙は「2年生の数学の教員が」暴行を行ったと発言するのみで、それが丙であるとはしていない。もっとも、A高校の2年生の数学を担当するのは丙しかいなかったことから、実質的に丙が暴行を行ったと発言しているに等しいことから、具体的な「人の」名誉に向けられたものであるといえる。これにより、A高校校長を介して教員25名全員に丙が甲に暴力を振るったとの話が広まったため、丙の「名誉」は「毀損」されたといえる。

   そして、乙には同罪の故意(38条1項)も認められる。

 (3) したがって、上記行為は同罪の構成要件を満たす。なお、実際には丙は甲を殴ってはいなかったものの、摘示内容の真実性は230条の2で問題となるものであるから、構成要件該当性の時点では問題とはならない。

 (4) 丙は私人であるから、230条の2は検討の余地はない。

 (5) また、乙はPTA役員として、教員が生徒に暴行したとの問題があった場合には、速やかにこれを調査するよう学校に求める義務を負っているものの、本件では丙が甲に暴行を行ったとの事実自体虚偽であり、また、乙は丙への個人的な恨みから上記行為を行っており、義務の履行として行ったものではないから、正当行為(35条1項)による違法性阻却事由も認められない。

 (6) よって、上記行為に名誉毀損罪が成立する。

第2 設問2

1 甲が乙を放置した行為について、殺人未遂罪(199条、203条)と保護責任者遺棄罪(218条)のいずれが成立するか。

2 殺人未遂罪が成立するとの立場

 (1) まず、上記行為が「殺」す行為に当たるか。199条は「殺」すと作為形式で実行行為を規定していることから、不作為による殺人の実行行為が認められるかが問題となる。

  ア 実行行為とは、構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為をいうところ、不作為によってもかかる危険性を惹起することは可能であるから、不作為であっても実行行為たり得る。もっとも、およそ全ての不作為が実行行為たり得るとすれば、処罰範囲が拡大しすぎ、刑法の自由保障機能の観点から妥当ではない。

    そこで、不作為については、作為と構成要件的同価値性が認められる場合、すなわち、①作為義務があったにもかかわらず、これを怠り、かつ、②作為が可能かつ容易であったにもかかわらずこれを怠った場合に、実行行為性が認められると考える。

  イ 本件では、甲が乙を介助することは容易であるとの事情があるから、②については問題なく認められる。

 問題は①についてである。作為義務の発生根拠は、法令のみならず、契約や慣習、条理等からも求められる。本件で、乙は甲の父であったところ、家族は共に扶け合うべきであるとの考えが我が国においては定着していることから、甲は条理上、乙を介助する義務を負っていたといえる。また、乙が倒れていたのは夜間人通りのない山道脇の駐車場であり、周囲に人もいなかったことから、乙の生命の安全は甲の排他的支配下にあったといえる。そうすると、甲には、乙を介助する義務があったといえ、甲はこれを懈怠しているから、①も認められる。

  ウ したがって、放置行為に実行行為性は認められる。

(2) 放置行為を行った時点で、乙の生命侵害に対する現実的危険が惹起されたといえるから、「実行に着手」(43条本文)したものと認められる。甲は死亡していないから、既遂ではない。

(3) そして、甲は、乙が崖から転落する危険があることを認識しながら、それでも構わないとして乙を放置しているため、未必の故意が認められる。

 (4) よって、上記行為に殺人未遂罪が成立する。

3 保護責任者遺棄罪成立論者からの反論

  上記行為に保護責任者遺棄罪が成立するとの立場からは、上記行為に殺人の実行行為性が認められないとして、殺人未遂罪は成立しないと反論することが考えられる。

 (1) 確かに、家族は共に扶け合うべきであるとの考えが我が国においては定着していることから、条理上、甲は乙を介助する義務がある。もっとも、義務違反が殺人罪の実行行為たり得るためには、義務違反により人が死亡する現実的危険性があるといえる程度のものである必要がある。

   本件では、乙は意識を失っていたものの、怪我の程度は軽傷であり、この怪我によって乙が死に至る可能性は無かった。また、乙が倒れた場所と崖からの距離は10メートルと離れており、乙が目を覚ました後直ちに崖下へ転落する蓋然性も無かった。そうすると、本件介助義務は、介助義務違反により、乙が死亡する現実的危険性があるといえる程度のものではなく、作為との構成要件的同価値性が認められないというべきである。

 (2) また、排他的支配についても、判例は行為者が先行行為等により生命への危険を生じさせた場合に、排他的支配の有無を重視しているところ、本件では甲は乙に対して何らの先行行為を行っていないから、このことからも、作為義務は否定する方向に働く。

 (3) 以上から、上記行為に殺人未遂罪は成立しない。

   そして、上記行為は、介助義務という「保護する責任のある」甲が、「病者」である乙を放置するという「必要な保護をしなかった」ものであり、故意も認められることから、かかる行為に保護責任者遺棄罪が成立する。

   私見もこれに従う。

第3 設問3

1 甲の主張は、換言すると、丁を救助する義務はないため、丁を放置した行為は「殺」す行為に当たらないから、殺人未遂罪は成立しないというものである。これは、いわゆる不能犯を主張するものと解釈できる。

2 殺人未遂罪が成立するとの立論

 (1) 実行行為とは、構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為であるところ、行為は主観と客観の統合体であるから、かかる危険性の有無を判断するにあたっては、主観も考慮すべきである。そして、構成要件は一般人に規範として与えられているから、主観は一般人を基準として判断を行うべきである。

   したがって、行為時に一般人が認識し得た事情を基礎にして,当該行為の危険の有無を判断すべきであると考える。

 (2) 本件では、丁と乙は体格や着衣が似ており、夜間で街灯がなく暗かったことから、丁と乙の見分けがつかない状況であった。そうすると、一般人を基準とすると、甲が放置したのは乙であったということになり、親である乙に生じた危難から救助する義務を懈怠する行為には乙の死亡の現実的危険性が認められるので、かかる放置行為に実行行為性が認められる。

 (3) また、甲は主観では乙を放置し、客観では丁を放置しているものの、前述の検討を踏まえると、両者は共に「甲が救助義務を負う者」として重なり合いが認められるので、故意は問題なく認められる(具体的事実の錯誤)。

 (4) したがって、放置行為に殺人未遂罪が成立する。

                                    以上

 

H30司法試験民事訴訟法再現答案

※設問1で面食らって設問2で大外しして設問3で諦めた答案です。

第1 設問1

1 課題(1)

 (1) Bの訴えの訴訟物

   BはAに対して、150万円を超えて債務がないことの確認を求める訴えを提起しているところ、債務不存在確認請求は給付請求の反対形相であることから、訴訟物は「自認額150万円を除いたその余の不法行為に基づく損害賠償請求権(の不存在)」である。

   なお、Bは債務総額を明らかにせずに訴えを提起しているものの、債務については被告たる債権者が一番よく知っているはずであるから、訴状・一件記録から訴訟物を特定できる場合には、総額を明らかにしない場合であっても問題はないと考える。そして、本件Bの訴えは、訴状の請求の趣旨から、本件事故に係る不法行為に基づく損害賠償請求権が訴訟物であると特定できるため、問題はない。

 (2) 二重起訴該当性

   Aの本件訴えはBの訴えとの関係で二重起訴(民事訴訟法(以下法名省略)142条)に当たり、許されないのではないか。

  ア 142条の趣旨は、同一請求を二度にわたり審査することにより生じる訴訟不経済や、訴訟物につき矛盾した判決がなされることを防止することにあるから、「事件」の同一性は、①当事者及び②審判対象の同一性の有無により判断するものと考える。なお、審判対象の同一性について、審判形式が同一であることまでは必要なく、訴訟物が同一であればよいと考える。

  イ Aの本件訴えとBの訴えは、原告被告が入れ替わっただけで共にAとBあり、当事者の同一性は認められる。また、Aの本件訴えの訴訟物もBの本件訴えの訴訟物も共に本件事故に係る不法行為に基づく損害賠償請求権であるから、審判対象の同一性も認められる。

    したがって、Aの本件訴えはBの訴えと「事件」の同一性が認められるため、二重起訴に当たるため、不適法とも思える。

 (3) Bの訴えにつき、確認の利益の欠如

   もっとも、Aが本件訴えを提起したことにより、Bの訴えは確認の利益を欠くことになる。

   訴訟は有限の司法資源により行われる営みであるから、真に紛争解決の必要がある訴えを吟味するため、提起される訴えには訴えの利益が存することが必要となる。特に、確認の訴えはその性質上対象無限定に広がるおそれがあり、執行力もないことから、訴えの利益の有無が特に厳格に吟味される。

   そして、Bの訴えは、執行力が付与されるという点で、Aの本件訴えの方がより適切であるといえるから、方法選択の適切性を欠き、確認の利益を欠くことになる。

   したがって、Aの訴えは二重起訴禁止に抵触するものの、適法なものと扱われる。Aの本件訴えとBの訴えは同一の乙地裁に係属しているから、この場合、両訴えは併合されることとなる。

 (4) Cを共同被告とすることの可否

   Cを共同被告として訴えを行うには、「訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき」(38条)といえる必要がある。本件訴訟物である不法行為に基づく損害賠償請求権の原因となった本件事故は、BとCが衝突したことによって生じたものであり、CはBと共にAに対して共同不法行為責任を負うものと考えられるから、上記要件を満たす。

   よって、Cを共同被告として本件訴えを行うことは可能である。

2 課題(2)

 (1) 管轄について

   まず、Aの本件訴えは、不法行為に基づく損害賠償請求であるから、不法行為地である乙市を管轄区域とする乙地裁に管轄権が認められる(5条9号)。

   また、被告の住所地を管轄する裁判所にも管轄権が認められるところ(3条の2第1項)、Bの住居地は乙市であり、Cの住居地は甲市であるから、甲市を管轄区域とする甲地裁にも管轄権が認められる。

   したがって、Aは普通裁判籍を理由に甲地裁に訴えを提起することができる。

 (2) 本件訴えの適法性について

   課題(1)と同様、二重起訴、確認の利益が問題となる。そして、本件ではAの訴えが甲地裁、Bの訴えが乙地裁に係属していることから、両訴えを併合することはできない。もっとも、紛争の終局的解決の見地からは、Aの本件訴えこそ存続すべきであるから、Bの訴えが不適法として却下され、Aの訴えは認められる。

   なお、裁量移送(17条)により、Bの訴えを甲地裁に移送することで両訴えを併合する余地はある。

第2 設問2

1 文書提出義務

  Bは文書提出命令の申立てを行っているところ、Dは220条各号列挙事由に該当する場合には、文書提出命令を拒むことはできない。そのため、Dは、同条各号該当性を主張して、診療録の提出を拒もうとすると考えられる。

  本件では、同条1号~3号該当事由は認められない。そのため、Dが提出義務を負うかは、一般提出義務を定める4号に該当するか否かによる。Bとしては、4号イ~ホのいずれにも当たらないとして、Dに提出義務が認められると主張するだろう。

2 220条4号ニ該当性

  これに対して、Dは、本件診療録が220条4号(ニ)に該当するとして、提出義務は認められないと反論する。

 (1) 自己専利用文書該当性は、①非開示性及び、②文書が開示されることによって生じる不利益性から判断を行う。

 (2) 一般に、患者の診療の際に作成されるカルテは、当該患者の通院ないし再度の診療の際に医師が記憶を喚起するために作成されるものであり、専ら医師の利用のために作成される文書であるとも思える。もっとも、カルテは患者が保険会社に保険金の給付を請求する際に添付することが求められ得るものでもあり、ある程度開示が予定された文書であるといえるから、非開示性に乏しい。

   また、本件診療録にはAの病状が記載されているところ、病状に関する情報を開示することは、Aのプライバシーを侵害するため、不利益性は大きいとも思える。しかし、本件訴訟の争点となっているのは、まさにAの病状の程度なのであり、これを開示しても、Aのプライバシーはそれほど侵害されないといえる。また、他に開示によってDが被る不利益も存しない。

   したがって、本件診療録は自己専利用文書に該当しない。

3 よって、Dに提出義務が認められる。

第3 設問3

1 理由(ア)について

  理由(ア)は、換言すると、Bの控訴審からの補助参加は、補助参加の時的限界を超えるため不可能であるというものである。

  補助参加制度は、補助参加の利益を有する者に、他人の訴訟に参加し一方当事者を勝訴させるための活動を認める制度であるところ、控訴審であっても、第三者が訴訟に参加することで一方当事者を勝訴させることは可能である。また、補助参加人は、被参加人に対する従属性を前提とした独立性を有しており、上訴の提起を行うことも認められている(45条1項)。そして、控訴については、控訴期間は被参加人であるAを基準とするところ、本件では控訴期間を徒過したとの事情は無い。

  したがって、補助参加の時的限界を超えないから、理由(ア)は意味をなさない。

2 理由(イ)について

  理由(イ)は2通りの解釈が可能である。1つは、①Bには補助参加の利益が認められないため補助参加をすることができないというものであり、もう1つは、②BがAに補助参加をすることは、矛盾挙動として許されないというものである。

 (1) ①について

  ア 補助参加は、訴訟の結果について法律上の利害関係を有する場合に認められる。

    「訴訟の結果」とは、補助参加人にはそもそも既判力が及ばないことから、訴訟物に限定する必要はなく、理由中の判断も含まれると考える。

  イ 本件において、AのCに対する不法行為に基づく損害賠償請求が認められると、CはBと共にAに対して共同不法行為責任を負うこととなり、同責任に基づく損害賠償債務は不真正連帯債務と解されるから、BがAに対して債務を履行すると、BはCに対して求償権を行使することができるようになる。

    したがって、Bは訴訟の結果について法律上の利害関係を有するため、補助参加の利益が認められる。

 (2) ②について

  ア 確かに、Bは第1審では被告としてAと対立していたにもかかわらず、控訴審においてA側につくことは、矛盾挙動として信義則(2条)に反し認められないようにも思える。

  イ しかし、本件では、独立して控訴をすることができない事情があるから、A側につくことで訴訟の内容を争うしか方法がないため、矛盾挙動には当たらないというべきである。

    控訴は、控訴の利益がある場合にのみ行うことが可能とされるところ、控訴の利益の有無は、基準の明確性の観点から、申立内容と判決内容を比較し、前者が後者を上回る場合に認められると解される。

本件では、AのCに対する損害賠償請求が認められたとしても、BがAに対して150万円の損害賠償債務を負うことに変わりはないため、申立内容が判決内容を上回る場面ではない。そのため、控訴の利益が認められないから、Bは独立して控訴をすることができない。

    そうすると、Bが判決内容を争うためには、Aに補助参加を行うより他はないといえるため、矛盾挙動と評価はできない。

  ウ また、実質的に見ても、Bは第1審において自己の過失を一切争わず認めているから、Aに補助参加をしたとしても矛盾挙動とは評価できない。

 (3) 以上から、(イ)の理由も意味をなさない。

3 以上から、(ア)(イ)の理由は意味をなさないため、丙高裁としては、Bの控訴を適法として扱うべきである。

 

 

 

H30司法試験商法再現答案

※よくわかんないです

 

第1 設問1

1 Dは、会社法(以下法名省略)433条1項1号)に基づき、総株主の議決権の100分の3以上の株式を有する株主として、帳簿閲覧請求を行っている。甲社は、同条2項各号の事由に該当しない限り、かかる請求を拒むことはできない。

 (1) そこで、甲社としては、Dが「実質的に競争関係にある事業を営む」者(同項3号)であるとして、請求を拒むことが考えられる。

   Dは、乙社の全株式を有する者であるところ、乙社は近畿地方のQ県でハンバーガー店を営んでおり、甲社と同じ業種を営んでいる。また、甲社と乙社は出店地域すら異なるものの、市場において競合しており、実質的に競争関係にあるといえる。

   確かに、Dは乙社の経営に関与していなかったものの、Dは乙社株式を全株保有する者であり、将来において関与する可能性までは否定しきれないから、「実質的に競争関係にある事業を営む」者に含まれると見てよい。

 (2) これに対して、Dは、Aがリベートを受け取っている疑いの調査のために請求を行っているのであって、会計帳簿を乙社のために利用しようという意図はないため、請求は認められるべきであると反論することが考えられる。しかし、433条2項3号は主観的意図を問題としていない以上、客観的に「実質的に競争関係にある事業を営」んでいることをもって、甲社は請求を拒否できるというべきである。

   したがって、Dの反論は認められない。

2 よって、甲社は請求を拒むことができる。なお、DはAにD保有甲社株式の買取りを打診し、Aがこれを断ったことをもって本件請求を持ち出し、Aが請求の撤回を求めると改めて買取りを打診していることから、Aのリベート疑惑調査のためというよりも株式買取交渉の材料として請求を行ったと評価できるため、「調査以外の目的で請求を行ったとき」(433条2項1号)による拒否事由にも該当し得る。

第2 設問2 小問(1)

1 決議1について

(1) 本件において、決議1は、Cの解任を目的とするところ、A、B、Aに議決権行使を委任したDの賛成により、出席株主の議決権の3分の2以上をもって可決されている。そのため、一見すると、決議1に瑕疵は無いようにも思える。

(2) しかし、本件では、DのAへの議決権委任に際し、本件契約が結ばれている。その内容は、①Dが平成27年4月1日に、代金2400万円と引換えにD保有株式全てをGに引き渡すこと、②甲社がGの丙銀行に対する800万円の借入金債務を連帯保証する、③DはAに、平成27年3月25日に開催される定時株主総会におけるDの全議決権を委任することである。形式的に見ると、①~③は独立した条項とも思えるが、1つの契約内で行われていることからして、GのDに対する2400万円の支払債務について、その弁済のためにGが丙銀行から800万円を借り入れることの連帯保証人に甲社がなることの対価として、DがAに全議決権を委任したと見るべきである。

そうすると、甲社がGの丙銀行に対する借入金債務を連帯保証したことは、「株主の権利」たるDの議決権行使に関し、連帯保証という債務負担による「財産上の利益の供与」を行ったとして、利益供与(120条1項)に当たるというべきである。

なお、甲社が直接に利益を供与しているのはGであるが、Gの丙銀行に対する債務を連帯保証することにより、Dも確実に株式売却代金を受けることが可能となっているのであるから、実質的にDに対しても行われたものと評価してよい。

 (3) 本件契約は利益供与により全体が無効となるから、DのAに対する議決権委任も無効である。そうすると、本件でC解任の可決票数はA,B合わせた550票ということになり、甲社定款所定の取締役解任に必要とされる3分の2の議決権数に届かない。それにもかかわらず、Cの解任は可決されているから、決議1には「決議の内容が定款に違反するとき」(831条1項2号)として、取消事由が認められる。

2 決議2について

 (1) Aは、株主総会議長として、株主総会秩序維持のための議長権限を有する。もっとも、かかる権限も無制約なものではなく、株主の権利行使について一定の配慮することが求められる。

   本件では、Cが株主提案であるAの解任について、その理由を説明しようとしたところ、これを遮って強行採決を行っている。株主提案権(303条1項)は株主の重要な権利の一つであるところ、かかる権利行使に基づく説明については、正当な理由がない限り、これを妨げることは許すべきではない。そして、本件でこれを許す正当な理由はない。

   したがって、Aの議長権行使は議長権の濫用として違法である。

 (2) もっとも、決議2は否決決議であるところ、否決決議は何等の法律関係も形成しないことから、形成の訴えの利益が認められないため、取消訴訟自体が認められず、上記違法を主張することはできない。

第3 設問2 小問(2)

1 Aの責任

 (1) 甲社がGの丙銀行に対する借入金債務を連帯保証したことについて、間接取引(356条1項3号、365条)に当たらないから、間接取引規制に係るAの責任は存しない。

   確かに、甲社は連帯保証に際してGから保証料を求めておらず、一方的にGの債務を負担するだけの契約となっているものの、本件連帯保証により取締役Aが受ける利益は、Gが確実にDに株式売却代金を支払うことで、A側の株主が増えるという支配権維持に係る利益であり、経済的利益は甲社とAの間で相反していないためである。

 (2) もっとも、前述のように本件連帯保証は利益供与(120条1項)に当たるため、Aは800万円の返還責任を負う(同条4項本文)。なお、Aは自ら主導して本件連帯保証を行っているため、同条但書の適用はない。

2 Gの責任

Gもまた、利益供与による800万円の返還責任を負う(120条3項)。本件連帯保証時、Gは株主ではなかったものの、120条1項は「何人」に対しても利益供与を禁じており、また、Gは確実に丙銀行から800万円を借り入れるという利益を得ているから、問題はない。

第4 設問3

1 Bとしては、本件請求は甲社定款9条の趣旨に反するため、許されないと主張する。

甲社定款9条は、会社法174条に基づき定められたものであるため、174条と同趣旨である。174条の趣旨は、相続による株式の一般承継については譲渡制限規制(134条)が及ばないことに着目し、会社にとって好ましくない者が株主となることを防ぎ、既存株主の利益を保護することにある。

そうすると、174条が想定するのは、相続により新たに株主となる者であり、既に株主である者が相続により株式を承継する場合には、その趣旨は及ばないというべきである。

  本件で、Bは既に甲社株主であり、Aから株主を承継したとしても、174条、甲社定款9条の趣旨たる会社にとって好ましくない者が株主となるという事態にはならない。

  したがって、Bに対する本件請求は、甲社定款9条の趣旨に反し、許されない。

2 また、Bは、本件請求は売渡請求権の濫用であるため許されないと主張する。

  174条の趣旨である会社にとって好ましくない者を会社から排除するという鑑みれば、特段の事情がない限り、相続人が有する全株式がその対象となるはずである。しかし、本件では、B保有株の450株のうち、401株についてのみ売渡請求がなされている。これは、Cが代表取締役の地位にとどまるため、議決権の過半数を確保するという支配権維持目的でなされたものであり、特段の事情とはいえない。

  したがって、B保有株式の一部についてのみなされた本件請求は、売渡請求権の濫用として許されない。

3 なお、250株分については、Aがそもそも保有していた株式であるから、この部分についても売渡請求をすることも許されない。

                                  以上

 (※3は、本件請求はAからの相続株式についてのみ請求されているので、明確に誤り。)

 

 

 

 

 

 

H30司法試験民法再現答案

※設問1は京大ロー系が有利な問題だったらしいですが、設問2・3でそのアドはすべて失われました。論パ貼り職人にはつらい試験でした。

第1 設問1

1 BはAに対して、売買契約(民法(以下法名省略)555条)に基づく代金支払請求を行っているところ、本件では目的物たる松茸5㎏と代金50万円の合意が成立しているため、請求原因を満たす。

2 Aは、松茸5㎏が引き渡されていないため、同時履行の抗弁権(533条)により、代金支払を拒むことが考えられる。もっとも、本件では松茸5㎏は何者かに盗み出されており、松茸の引渡しは履行不能(543条)であるため、同時履行は不可能であるとも思える。

  もっとも、Aとしては、松茸5㎏の引渡しは種類物債権(401条1項)であるところ、未だ松茸5㎏は「特定」していないため、Bはなお引渡債務を負うから、同時履行の抗弁権は認められると反論する。そこで、本件において松茸5㎏特定のための「必要な行為を完了し」たといえるか検討する(401条2項)。

(1) 本件では、松茸5㎏の引渡しはB所有の乙倉庫で行うとの「特段の合意」(483条)がなされていたため、松茸の引渡しは取立債務であった。取立債務においては、単に引渡しの準備が整ったことを通知するのみならず、他の種類物と区別できるよう分離されて初めて、「必要な行為を完了し」たとして、特定がなされると考える。

(2) 本件では、Bは松茸5㎏の箱詰めを行っており、他の松茸と判別可能な状態に分離した上で、引渡しの準備ができたとの通知をAに行っている。したがって、松茸5gは特定されたといえる。

(3) そうすると、特定物たる松茸5㎏が盗難により滅失しているため、引渡債務は履行不能となっている。したがって、Aの同時履行の抗弁権は認められない。

3 そこで、Aとしては、履行不能に基づく解除(543条)により、代金支払債務も遡及的に消滅するため、代金を支払う必要はないと主張することが考えられる。かかる主張が認められるためには、履行不能がBの「責めに帰すべき事由」によることが必要である。では、Bに「責めに帰すべき事由」は認められるか。

 (1) 「責めに帰すべき事由」とは、故意、過失及び信義則上これと同視すべき事由をいう。ここで、履行補助者を用いている場合、債務者は履行補助者により利益を得ている以上、不利益も負担すべきであるという考えから、履行補助者の故意・過失も信義則上同視すべき事由に含まれると考える。

 (2) 本件で、Bは収穫期に雇っているCと共に作業を行っているため、CはBの履行補助者である。

  そして、CはBの指示により、乙倉庫を二重に施錠することで松茸5gを保管する善管注意義務(400条)を負っていたところ、平成29年9月22日、これをうっかり忘れて簡易な施錠しか行っていなかったことから、善管注意義務違反が認められる。

   したがって、Bには「責めに帰すべき事由」が認められるとも思える。

 (3) もっとも、本件では、AB間の約定により、引渡日は平成29年9月21日であったところ、Aが乙倉庫に来なかったという事情がある。この時点で、Aには受領遅滞(413条)が生じている。受領遅滞責任は、債務者に過度の負担を負わせないために設けられた法定責任であり、受領遅滞があった日以降は、債務者は目的物の保管につき、善管注意義務ではなく、自己物に対する注意義務(659条参照)を尽くせば足りると考えられる。

   本件で、Cが簡易な施錠を行ったのは、受領遅滞後の平成29年9月22日であり、簡易な施錠を行ったことをもって、自己物に対する注意義務は尽くされたといえる。

   したがって、Bには「責めに帰すべき事由」が認められない。よって、Aの主張は認められない。

4 そして、本件松茸5㎏の引渡債務は、盗難という当事者双方の責めに帰すことができない事由により消滅しており、かかる債務は物権の移転を目的とするものであるから、債権者主義(534条1項)の適用により、売買代金債務は存続する。

  よって、BはAに対して、代金支払請求を行うことができる。

第2 設問2

1 小問(1)

(ア)の発言は、換言すると、AD間の所有権留保売買契約により、甲トラックの所有権はAにあるため、Dは収去権限を有さないというものである。かかる主張が認められるかは、所有権留保売買契約の法的性質によるため、検討する。

 (1) 売買契約の形式を重視する立場からは、甲トラックの所有権はなおDに留保されているため、所有権がAに移転しているとのDの主張は認められず、Dは収去権限を有するになる。

 (2) もっとも、所有権留保の実質は、売買代金の担保にあり、所有権留保売買契約により、売主は一種の担保権を取得するものと考えるべきである。そうすると、本件所有権留保売買契約により、甲トラックの所有権はAに移転し、Dは担保権を有するにとどまる。

   したがって、Dは甲トラックについて収去権限を有さないため、Dの主張は認められる。

 (3) なお、AD間の特約④は、甲トラックの改造を禁じるものであるが、Aは所有権に基づき本来自由に甲トラックを改造できるにもかかわらず、これができないとされていることは、甲トラックの所有権を有するのはAではなくDであるとの判断に結びつく事情といえる。もっとも、これは、甲トラックに係る担保価値を減少させないための特約とも評価できるため、この一事をもって、上記判断が覆ることはない。

2 小問(2)

(イ)の発言は、換言すると、甲トラックに自身の登録名義が残っている一事をもって、Dが収去義務を負うことはないというものである。Eの請求が認められるためには、Dに収去義務が存することが必要であるから、かかる主張が認められるかについて検討する。

 (1) これについて、所有権を侵害されている者にとっては、トラックの登録名義を確認することでしか収去請求の相手方を知ることができない。また、所有権留保売買契約という性質上、登録名義をなおDのままにしなければならなかったとしても、それは当事者間の事情にすぎず、これを所有権侵害の相手方に主張することはできないというべきである。

   そうすると、Dは、所有権喪失を主張する正当な利益を有する「第三者」(登録名義制度による動産であるため、177条)には当たらず、所有権の喪失をEに対抗できないと考える。

 (2) したがって、Eの請求は認められる。

第3 設問3

1 本件遺言の解釈

 (1) 本件遺言は、Aの積極財産のうち、1200万円をFに、600万円をGに相続「させる」としているところ、かかる相続「させる」旨の遺言は、遺言による相続分の指定(902条1項)と解釈すべきである。

 (2) また、本件遺言は、Hに200万円を与えるとしている。ここで、HについてはF,Gとは異なり、

「させる」ではなく「与える」という文言を用いていること、「廃除の意思を変えるものではない」としていることを併せて考えると、Cとしては、Hが廃除により相続人ではないことを前提として、200万円を遺贈(964条)したものと解釈すべきである。

 (3) (2)より、Cの相続人はF、Gのみであり、(1)に照らすと、相続分は、Fが3分の2、Gが3分の1であると解釈すべきである。

2 FのGに対する請求

  Fとしては、Cの代わりにGに支払った300万円のうち、折半した150万円について、Gに対して支払ってほしいと考える。もっとも、前述のように、相続分はFが3分の2であり、Gが3分の1である。また、積極財産をより多く相続したものが、消極財産についてはこの限りではないという主張を行うことを認めるべきではない。

  したがって、FはGに対して100万円に限り、支払を求めることができる。

                                   以上

 

 

H30司法試験行政法再現答案

※墓地埋葬法に需給調整の目的があることを知らなかった者が書いた答案です(後々聞くところによると百選掲載判例だったらしい。かなしい)(あと設問よく読んでなかったからB市側の立場に立たないといけないのにB市側の反論潰しているところあるよ。何やってるんだよ団長……!)

設問1

第1 小問(1)

1 原告適格(行政事件訴訟法(以下、行訴法)9条1項)の判断基準

  「法律上の利益を有する者」(行訴法9条)とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的侵害されるおそれのある者をいう。そして、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的・抽象的公益に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護する趣旨を含むときは、かかる個別的利益をここにいう「法律上保護された利益」に当たると考える。

  処分の名宛人以外の原告適格については、行訴法9条2項に基づき判断する。具体的には、①不利益要件、②保護範囲要件、③個別保護要件を検討しつつ、原告適格の有無につき判断を行う。

2 Dについて

 (1) 不利益要件

   Dとしては、墓地経営に係る営業上の不利益(営業利益)を主張することが考えられる。

 (2) 保護範囲要件

   法は営業利益を保護範囲に含めているか。本件許可を定める法10条は単に墓地を経営しようとする者は都道府県知事の許可を受けなければならないと定めるのみであり、この点について明らかにしない。もっとも、法1条は、目的として「墓地…の管理…が、…支障なく行われること」を掲げており、墓地経営に係る利益を保護範囲に含めることを前提にしているといえる。また、法10条を受けて規定された「関連法令」たる本件条例は、許可申請者に対して墓地周囲100メートル区域の状況を明らかにした図面の提出を求めており(本件条例9条2項(4))、墓地経営区域に係る周囲の墓地の有無を許可の判断材料していることが読み取れるから、法は営業利益を保護範囲に含めているといえる。

   したがって、保護範囲要件を満たす。

 (3) 個別保護要件

   では、法は営業利益を個別的利益としても保護する趣旨か。本件条例は、許可申請者に対して説明会の開催を求めており、その内容の報告を求めているから(本件条例6条)、周辺の墓地経営者は、説明会において自己の不利益を主張する機会を与えられているといえるため、法は他の墓地経営者の営業利益を個別に保護する趣旨であるといえる。

   したがって、個別保護要件も満たすので、Dは「法律上の利益を有する者」として、原告適格が認められる。

 (4) B市の反論

  ア Dは法1条及び本件条例9条から、営業利益が法の保護範囲に含まれていると主張する。しかし、法1条の目的から直ちに営業利益が保護範囲に含まれていると導き出すのは難しい。また、本件条例9条2項(3)についても、同項(2)が墓地の構造設備を明らかにした図面の提出も求めていることや、同条例13条2項が飲料水汚染をしないことを求めていること、14条が排水設備等について定めていることを併せると、これは周囲の環境を保護する趣旨の規定と読むべきであり、営業利益については保護範囲に含めていないというべきである。

  イ また、仮に営業利益が保護範囲に含まれていたとしても、本件条例は説明会の結果を反映することを都道府県知事に求めていないから、本件条例6条をもって営業利益が個別に保護されていると評価することはできない。その他、営業利益を個別保護していると読み取れる規定もない。

  ウ したがって、Dの原告適格は認められない。私見もこれに従う。

2 Eについて

 (1) 不利益要件

Eは、生活環境及び衛生環境の悪化という不利益(住環境利益)を主張することが考えられる。

 (2) 保護範囲要件

   許可を定める法10条は住環境利益を保護範囲に含めているか明らかにしていない。もっとも、法1条は目的として「墓地…の管理…が、…公衆衛生…の見地から、支障なく行われること」を掲げており、住環境利益を保護する趣旨であることが読み取れる。また、関連法令である本件条例9条は、許可申請者に対して墓地の構造設備を明らかにした図面の提出等を求めていること(同条2項(2))、同条例13条が、墓地が住宅等から100メートル以上離れていることを求めていること(同条1項(1)(2))、飲料水を汚染しない場所への設置を求めていること(同条2項)、一定の構造設備を備えていること(同条例14条)などを求めていることにかんがみると、法は住環境利益を保護範囲に含めているといえる。

   したがって、保護範囲要件を満たす。

 (3) 個別保護要件

   では、法は住環境利益を個別に保護する趣旨も含むか。

   不衛生な環境は、反復継続することによって、住民の生命・身体にも影響を及ぼし得ること、墓地の設置について少なくとも100メートルの距離制限を本件条例13条は設けていることからすれば、法は墓地による影響が直接及ぶ範囲に居住する者の住環境利益を保護する趣旨であるといえる。

   Eは本件土地から80メートルのところに障害福祉サービス事務所を構えており、墓地が経営された場合にはその影響が直接及ぶ範囲にいるといえるため、Eの住環境利益は個別に保護されているといえる。

   したがって、Eの原告適格は認められる。

 (4) B市の反論

   B市は、Eは事務所に居住しているわけではないのであるから、墓地による影響が直接及ぶものに当たらないと反論することが考えられる。しかし、Eの事務所は定員に近い利用者が日常的に利用しており、これらの者に対して直接影響が及ぶため、かかる反論は認められないと思われる。私見もこれに従う。

第2 小問(2)

1 本件条例13条違反との主張

 (1) Eは、本件事務所が本件土地の100メートル以内に存在することから、本件許可は本件条例13条に違反すると主張することが考えられる。

   これに対して、B市としては、「公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認められる」(同条但書)として、許可は適法であると反論したい。もっとも、前述のように本件事務所は日常的に定員に近い利用者が利用しており、支障が無いと判断することは難しいと思われる。

 (2) もっとも、Eはかかる違法事由を主張することはできないと考える。本件で、EはDの依頼を受けて、特に移転を行う必要はなかったにもかかわらず事務所を移転させている。つまり、Eとしては専ら本件許可を妨げる目的で事務所を開業したものと認められ、このような背信的悪意による権利主張は、権利濫用として認めるべきではないためである。

2 本件墓地の実質的経営者はAではなくCであるとの主張

 (1) 墓地経営者は、原則として地方公共団体とされ、例外的に宗教法人が行うことも可能とされている(本件条例3条1項(1))。

   本件でも、形式的には宗教法人であるAが許可申請を行っている。もっとも、本件土地の用地買収や造成工事に係る費用は全額Cが無利息で融資しており、また、住民への説明会でも、AとともにCの従業員がこれを行っている。また、そもそも本件墓地の開設は、CがAに対して提案したものであった。これらの事情を併せると、実質的に、本件墓地開設はCが主導しており、実質的経営者はAではなくCであると評価できる。

   そうすると、本件許可は、本件条例3条1項(1)に違反することとなる。

 (2) もっとも、Eはかかる違法を主張できない。本件墓地の実質的経営者がAかCかは、Eの法的地位に影響を及ぼすものではないためである(行訴法10条)。

設問2

第1 周辺住民の反対運動が激しくなったという理由

1 Aは、このような理由で不許可処分をすることは裁量権の逸脱・濫用であり違法であると主張する。

 (1) 法10条は、墓地を開設しようとする者に対して「許可を受けなければならない」と規定するにとどまり、市長に対して許可を義務付けるものではない。また、許可に当たっては周辺の状況等を踏まえた専門的判断を要するから、法は許可に当たって市長に裁量を与えているものといえる。

   もっとも、本件では、かかる許可にあたって、その基準となる本件条例が制定されている。そのため、本件条例が審査基準(行政手続法5条1項参照)と同様の機能を果たす結果、かかる裁量も本件条例の基準に羈束される。その結果、基準を機械的に適用することが不相当と認められる特段の事情がない限り、基準外の事由を理由に不許可処分を行うことは、裁量権の濫用と評価される。

 (2) 本件では、「周辺住民の反対運動が激しくなった」という理由から、不許可処分がなされているところ、このような事由は本件条例13条に掲げる基準にはない。そのため、B市は基準外の事由を理由に不許可処分を行ったということになる。そして、本件では基準を機械的に適用することが不相当と認められる特段の事情もない。

   したがって、本件不許可処分は違法である。

2 このような主張に対して、B市としては、この理由は本件条例14条2項の基準である「植栽を行う等周辺の生活環境と調和するよう配慮」することに反していることを示すものであると反論することが考えられる。もっとも、このような反論は、理由提示として不十分であるため、認められない。

  不許可処分を行うに当たっては、行政の恣意抑制及び被処分者への不服申立ての便宜の観点から、具体的な理由が示されなければならない(行政手続法8条参照)。そして、審査基準が定められているときは、その適用条項及び具体的な事由も併せて提示することが求められる。

  しかし、本件では、具体的な事由はおろか、本件条例の適用条項すら示さずに、上記の理由により不許可処分が行われている。したがって、仮に配慮を尽くしていないことが事実であったとしても、理由提示として不十分であるため、手続的に違法である。

第2 墓地供給が過剰であるとの理由

1 Aとしては、この理由についても、本件条例の基準外の事由であり、基準を機械的に適用することが不相当と認められる特段の事情はないとして、本件不許可処分は裁量権の逸脱・濫用として違法であると主張する。

2 これに対して、B市は、本件基準を機械的に適用しない特段の事情が認められるため、適法であると反論する。

  B市内には複数の墓地があるが、いずれも供給過剰状態となっており、Aの新規参入を認めると、Dのような小規模墓地の経営が破綻することが予見されている。そのため、本件条例の基準を機械的に適用すると、このような事態が生じるため、これを避けるため基準を適用しない特段の事情が認められる。

  Aとしては、前述のように、墓地経営者の営業利益は法の保護するところではないとしたにもかかわらず、このような営業利益を持ちだして不許可処分とするのは妥当ではないと再反論することが考えられる。これについては、小規模墓地が経営破綻により放置され、排水路などを整備する者がいなくなると、周辺の住環境に悪影響を及ぼすおそれがあり、また、墓地の経営破綻により無管理墓地が出現することは、国民の宗教感情に反する事態であるといえるため、実質的には宗教感情と住環境保護を目的としているから、かかる再反論は妥当しないと考える。

3 したがって、かかる理由に基づく不許可処分は適法である。

                                   以上